出会いは、寂寞から

・作

主人公・心美は、24歳年上の牧人と結婚することになった。彼は何度も「こんなに歳の離れた自分で良いのか?」と訊ねる。それでも心美は、「あなたがいい」と繰り返す。2人はなぜ、惹かれあったのか。なぜ、互いでなければいけなかったのか。その真相は…。

登場人物

心美(ここみ) 24歳 過去の傷心がきっかけで、心に深い傷を負っていた
牧人(まきと) 48歳 心美の夫 過去に結婚歴がある

「この度は、おめでとうございます」

市役所に婚姻届を提出すると、担当の職員は控えめに微笑んでそう言った。

私と牧人さんは軽く頭を下げ、そっと手を繋いでその場を後にする。

「…親子だと、思われただろうね」

牧人さんは自嘲気味に笑うと、私は握った手に力を込める。

「別に、誰がどう思おうと関係ないから」

彼は私の気持ちを察したように、「そうだね」と微笑んだ。目尻に寄った皺は年相応だけれど、そこには無限の愛が込められたような温かさがある。

24歳の私と、48歳の彼。

何も知らない人が私たちを見たら、十中八九親子に見えるだろう。

彼と交際してから、そんなことは何度もあった。

それと同時に、歳の差がかなりあるカップルが大勢いることも、知ったのだ。だから決して、恥ずかしかったり疚しいことなんて、何もない。

「あ…」

ふと顔をあげると、お城のような形をしたラブホテルが、妖艶な照明を放って輝いているのが見えた。

ここは、私と彼が初めて抱き合った場所だ。

「牧人さん、今、一度だけしていかない?」

「でも、マンションでワインが冷えているよ。これからはずっと一緒だし、そんなに焦らなくてもいいんじゃないかな」

そう、結婚した以上、これからは無意味に孤独を感じることもない。

仕事が終われば同じ部屋に帰り、同じものを食べ、お風呂に入ってセックスをして眠る。

幾億とそんな日常の繰り返しだ。それでも私は、今、抱き合いたい。

「一度でいいから、ね?」

耳元で囁くと、彼は頷いた。

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