卒業旅行のバスの中で
海外旅行に行けなくなったので、仕方なく大学の卒業旅行は観光バスで温泉旅行へ行くことにした。偶然にも観光バスのガイドは、自動車教習所で知り合った佳子だった。何度か同じ車に乗って教習を受けただけで、自動車教習所を卒業後は会うこともなかったが、その日の夜、2人でバスの車内に忘れ物を取りに行くことになり・・・
今年、大学を卒業することになった。
海外に卒業旅行を計画していたが、今年は無理なので仕方なくガイド付きの観光バスを貸し切りにして友人たちと温泉旅行に行くことにした。
当日、集合場所でバスを待っているとガイドを乗せた大きめの観光バスがやってきた。
ガイドさんが降りてきて、
「2日間よろしくお願いします」
と言いながらお辞儀をして顔を上げると、一瞬、表情が驚いたように変わった。
俺も、一瞬びっくりした。
彼女は、自動車教習所の同級生で何度か2人で同じ車に乗ったことがある。
彼女が素知らぬ顔をしていたので、それに合わせて俺も素知らぬ顔をした。
内心は、親しく話したかったが、友人たちや運転手さんの手前、なれなれしくするわけにはいかなかった。
夜、彼女はどこにいるのだろうと思いつつもどうしようなく友人たちと戯れていると、友人の一人がバスに忘れ物したと言い出した。
これを聞いてラッキーと思い、
「俺、聞いてくる」
ホテルの人を通じてバスの運転手に連絡をとってもらった。
幸運なことに、運転手は酔っぱらっていたのでガイドの彼女が現れた。
「こんばんは、すいません。友達が忘れ物をしたそうなので」
「わかりました、今からバスに行きますのでついて来てください」
「あのー、ガイドさんとは教習所で一緒でしたよね」
「やっぱり、あの時の人!」
「バスガイドの制服だとちょっと見違えました。こんなに綺麗な方だったんですね。再会できて嬉しかった。」
「ちょっと恥ずかしいかな。あのころはスッピンだったし、今は化け方がうまくなっただけですよ」
バスの中で、忘れ物を探して帰ろうとしたが、折角のチャンス。
「あとで、また会えませんか?こんな偶然めったにないし」
「そうですね、あまり人に見られたくないから。1時間後にここでなら」
「ありがとう。再会を祝して軽く乾杯でもしましょう」
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