雨上がりの空には (Page 5)
「平気…?動いてもいい?」
痛くないと言えば嘘になるけれど、一つになれたのが嬉しくて、私は小さく頷いた。
最初は内側から圧迫される異物感だけだった行為も、徐々にじんわりと甘い痺れに変わり、自然と小さな喘ぎが漏れる。
お腹の中があったかくなって、繋がっているのが心地良い。
「は…ぁっ…ぁ…ぁっ…」
溢れてきた粘液が擦れ、雨音でも隠し切れない、いやらしい音が響いて。
緩やかな刺激がじれったくなってきた頃、シュウちゃんは腰を止め、私の唇を指でなぞった。
「…ふ…?」
「…イきそうだから、ちょっと休憩」
私は口元にあったシュウちゃんの指を、何気なく舐めた。
「あ、…」
ぴくっ、と指先が反応する。
…ここ、弱いのかな?
人差し指をくわえて、傷付けないようにそっとしゃぶってみる。
「ちゅ…ん…ちゅぱ…」
「…っ…」
「んっ…ん、んっ…ふ…」
シュウちゃんは大きな目を細めて、薄く開いた唇からはぁはぁと息をつく。
「…だめ。ごめん、俺もう…!」
「!…あ…あぁっ…待っ…」
さっきまでとは違って、荒っぽくベッドが軋んだ。
底冷えする夜なのに、こうしていると汗が浮かぶほど熱い。
「ぁっ…ん…っぅ…はぁ…」
「はっ…はぁ…っ…みっちゃん…っ…」
「あぁう…!ふぁ…!」
…どくっ、どくん、びゅくっ…
倒れるように覆い被さってきたシュウちゃんの背中を、ぎゅっと抱きしめる。
昔はちょっと走っただけで、すぐ発作を起こして、大人が来るまでよく擦ってあげた背中。
「…苦しくない?」
「うん。みっちゃんは、大丈夫?」
「まだ痛いけど、幸せだから大丈夫」
「ごめん…」
腕枕をしてもらって、もう何度目か分からないキスをした。
「…好きだよ」
昼前に家に戻ると、土曜日で休みだった母は昨日と同じ服装のまま、退屈そうにテレビを眺めていた。
「…クッキーの作り方、教えてよ。昔よく焼いてくれたでしょ」
母はゆっくり振り返り、大きな目をぱちくりさせる。
「シュウちゃんが、お母さんのクッキー、また食べたいんだって」
私はキャリアウーマンで自立したシュウちゃんのお母さんをカッコよく思っていたけれど、あっちはあっちで家庭的だった私の母を羨ましく思っていたらしい。
いくらお金をかけてもらっても、満たされないものはあるのだ。
「…あの子、まだ仲良くしてくれてたの?」
「うん。昨日、お世話になったから」
「…そう…」
私と母はじっと見つめ合い、それから同時に笑った。
「…じゃあ、お買い物に行かなくっちゃ」
「その前に片付けようよ。埃が入っちゃう」
「待って、お風呂に入って、それから…」
空気の入れ替えをするためにカーテンを開けると、空いっぱいに虹がかかっていた。
昨日はごめんね、と小さな声で母が言う。
…そうだ、間違ってもやり直せばいい。
私は足元に落ちていた空き缶を拾い、ゴミ箱にぽんと投げ入れた。
「…ただいま、お母さん」
(了)
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