兄嫁の本性 (Page 5)

「あっ」

 小さく喘いで、帆乃美は一瞬気を失った。博隆が受け止めたおかげで、トイレの床に倒れ込まずに済んだが、挿入を催促するようにカクカクと下品に腰が動く。
 
「ケツイキしてないで、さっさと立て」

 腕を引っ張って博隆は、帆乃美を多目的トイレから連れ出した。
 それから二度、三度と路上で帆乃美は絶頂した。その度に少しずつ彼女の瞳から反抗の光が失せ、博隆の腕に縋りつくばかりになった。
 
「もぉ、止めて、お尻おかしくなるぅ」
「分かった分かった。それじゃあ、あそこのコンビニでゴムを買ってきな。ガキを孕みたいんならいいけどな」

 妊娠を防ぎ、尻穴調教を止めさせたい一心で帆乃美はコンビニへと向かう。
 よろよろと酔っ払いのような足取りでコンビニに入り、コンドームを探す。
 
 店内には近くのオフィスから来たらしいスーツ姿の男女が何人かいた。ちらちらと足取りの怪しい帆乃美に視線を投げるが、積極的に手助けしようという者は誰もいない。
 
 一方の帆乃美は、周囲のそんな視線には気づきもせず、楽になりたいと必死になってコンドームを探していた。
 
 そして――
 
「あった」

 声に歓喜が滲む。
 これがあれば、お尻を解放してもらえる。
 
 これがあれば、もっと気持ち良くしてもらえる。
 そう考えて、帆乃美は我に返った。頬が引き攣り、手に取っていたコンドームが床に落ちる。
 
「帆乃美?」

 ぎゅっと心臓を掴まれた気分だった。
 帆乃美は呆然とした表情で自分の名前を読んだ人物を、夫の顔を見る。
 
「こんな所で、どうしたんだ?」
「これ、は、博信(ひろのぶ)さん」

 言葉が意味を成さない。
 
 博信はふと帆乃美の足元へ視線を向け、そこに落ちているコンドームの箱に目を止めた。その瞬間、破滅が決定的なものになった気がした。だが、追いつめられた彼女の脳髄は新たな活路を見出す。
 
「あ、あの」
「これは?」

 コンドームを拾い上げ、博信が問いかける。
 
「博隆さんのことで相談したいことがあるの」
「博隆のこと?」

 弟の名前を出され、訝しげな表情になる夫を見て帆乃美は兄弟揃って馬鹿なことを神に感謝した。
 
「うん。私、博隆さんに、脅されて……」
「場所を移そう」

 博信はどういう訳か、帆乃美が買おうとしていたコンドームを代わりにコンビニで購入した。
 その愚鈍な行動に思わず帆乃美は苛立つ。だが、ここで博信の機嫌を損ねる訳にはいかないので顔には出さない。
 
 コンビニを退店して周囲を見回すが、どこにも博隆の姿はない。もしかしたら兄の登場を察知して逃げたのだろうか。

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