アナザーバトル (Page 10)

 香織を犯した北原は、もう用済みだとばかりに、彼女を殺そうとする。
 念動力で香織の首を絞める北原。

「あぐっ!」

 息苦しさが香織を襲う。
 このままでは北原が今まで殺してきた女たちと同じように首を折られる……。

「こ、このおっ!」

 香織は叫び、どうにか右手に意識を集中させた。
 右手が青白い電光で覆われる。
 そして北原に向かって、バチバチと放電している電光が飛んだ。

「ぐはっ!」

 香織にはもう反撃する力は残っていない……そう思い、北原は油断していた。
 電光の直撃を受け、吹き飛ぶ北原。
 地面に落ち、意識を失う。すると念動力が消え、香織の体も地面に落ちた。
 荒く呼吸をする香織も、意識を失ってしまいそうだ。
 意識をつなぎ止め、香織は警察に連絡を入れた。

 

 連続殺人犯である北原が警察に連行されるのを、渡された毛布で全身をくるんだ香織はジッと見つめていた。

「連続殺人犯の逮捕協力、感謝するよ。それと……」

 藤田は全身を毛布でくるんでいる香織の姿を見て言う。

「災難だったな」

「よくあることよ」

 香織は肩をすくめて応えた。
 それからスマートフォンで口座を確認する。
 北原に懸けられていた賞金は、すでに振り込まれていた。

「悪いけど藤田さん、家まで送ってくれる? この格好じゃ、さすがに1人じゃ帰れないわ」

「ああ、かまわないさ」

 香織は藤田の車で家まで送ってもらう。
 さすがに疲れた。今は早く休みたい香織であった。

◇◇◇

 いつからだろうか、この世界が『普通』ではなくなったのは。
 かつては『非常識』だったものが、今では『常識』になっている。
 世界は、いつの間にか変わってしまったのだ。

 

 特殊能力を使って強盗を働いた男たちが、停めている車に乗り込もうとする。
 しかし、男たちは車に乗り込むことはできなかった。
 乗り込む前に、青白い電光が車を吹き飛ばした。

「観念しなさい、強盗犯」

 そう言って強盗犯である男たちの前に立つのは、両手をバチバチと放電させている香織であった。

 

 特殊な能力を持つ人間がいて、その能力を犯罪に使う者がいる。
 そして、特殊能力犯罪者を特殊能力を使って捕まえる者がいる。
 今はそんな世界になっていた。

(了)

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