アナザーバトル (Page 5)
その日の夜も、北原は獲物を探していた。
人殺し……特に女を苦しめて殺すのは北原にとって、とても楽しいことであった。
いつものように北原は猫背気味で繁華街を歩きながら、今夜の獲物を探す。
あちこちをウロウロしていた視線が、一点で止まる。
北原の視線の先にいるのは、キャリアウーマン風のスーツ姿の女。
その女を見つめる北原の口元に、ニヤリとした笑みが浮かんだ。
今夜の獲物は決まった。
北原は、そのキャリアウーマン風の女を追った。
キャリアウーマン風の女は、賑わっている繁華街から出て寂しい通りを歩いていた。
距離を空け、北原は彼女を追っている。
女はまさか自分が追われているなど、少しも思っていない。
命を狙われているなどとも、思っていないことであろう。
女の姿を視界に収めている北原は、顔に獰猛(どうもう)な笑みを浮かべた。
そして、右手を突き出して力を……念動力と呼ばれる特殊な能力を発動させる。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げ、吹き飛ばすキャリアウーマン風の女。
目に見えない力……北原の念動力で体を強く押されたのだ。
北原はそのまま、彼女の体を念動力で壁に押し付ける。
女は暴れるが、体が壁から離れることはない。
ただ手足をジタバタと暴れさせることしかできなかった。
そんな女の姿を楽しげに眺めながら、北原は彼女の首に意識を集中させようとする。
そのときだった……。
バチバチと音を立て、青白い電光が北原に向かって飛んできた。
北原は咄嗟(とっさ)に後ろに跳んだ。
飛んできた電光は、それまで北原が立っていた路面に直撃した。
黒く焦げるアスファルトの路面。
念動力を発動させるための集中が途切れ、壁に押し付けられている女の体が自由になる。
「逃げてっ!」
北原に向かって電光を放った者……開襟シャツにジーパンという服装の香織が叫ぶ。
香織の叫びに押されるようにして、キャリアウーマン風の女は逃げだす。
今夜の獲物に逃げられて北原は「チッ!」と舌打ちし、右手をバチバチと放電させている香織を睨んだ。
「よくも邪魔してくれたな。何者だ?」
「あんたと同じ特殊能力者……そして、賞金稼ぎよっ!」
香織は再び電光を北原に向けて放った。
北原は右手を突き出す。
香織が放った電光は、北原に当たる前に目に見えない壁に当たり、消滅した。
「無駄だ」
念動力を使ってシールドを作り、それで香織の電光を防いだ北原はニヤリと笑う。
香織は2発、3発と電光を放つが、いずれも北原には当たらない。
念動力のシールドで防がれてしまう。
北原は香織に背を向け、走りだす……逃げだした。
「逃がさないっ!」
香織は逃げる北原を追った。
レビューを書く