ちっちゃい妹じゃだめですか? (Page 4)
「先輩、どうしました?」
俺の言い訳を、聞き慣れた声が遮った。
振り返ると、若い二人と小林さんが立っている。
「帰ろ。『私達の』おうちに帰ろ!」
凛が急に声をあげ、必死になって俺の腕を引っ張っる。
「あ、いや、ちょっと待てって。……もう、お開きか?」
「はい。先輩も二次会……行きませんよね?」
彼は凛を一瞥して苦笑いを浮かべ、俺のかばんを差し出した。
俺は「ごめんな」とかばんを受け取る。
「佐藤さん、ごめんね。今日は私が出すから。……今度は最後まで付き合ってぜんぶ出してね」
そう言った彼女の濡れた唇が、俺にさっきのことを思い出させる。
「それは、えと……」
ちらりと見た凛は、頬をぷくっと膨らませてお怒りモードだ。
「ああ、いえ、ここは俺が出します。次は割り勘で」
「……そか。じゃあ、私もこの子達と二次会行ってくるね。佐藤さんは、『大事な彼女』と楽しい週末を」
小林さんが澄ました顔でそう言うと、凛が俺の腕に抱き着いて彼女を睨んだ。
「ああ。お疲れ様」
「お疲れ様です。ごちそうさまでした」
小林さんは凛の視線を気にする風もなく、涼しい顔で店を出て行った。
*****
「……智くん。あの人となんかあったよね?」
俺の部屋に戻った途端、凛が訊いてきた。
俺は言葉を失い、床に正座する。
「……トイレから、あのおっぱいお化けと出てきたじゃん」
「……ほんとに見てた?」
「あの人、トイレから出てきた時、顔真っ赤だった」
「よ、酔ってたから」
「ブラウスのボタンが外れてた」
「吐くときに苦しいからさ」
「ブラがズレて、乳首が浮いてた」
「え? うそ?」
「……なんかあったよね?」
「いや、ただ俺がトイレで抜こうとしてたらーー」
「ぬ、抜くって、なんでよ!」
「し、仕方ないだろ! お前が毎日毎日うちに来てくっついてくるから、溜まってんだよ! だからトイレで処理しようとしたら、鍵をかけ忘れてて彼女が入って来ちゃってーー」
ヤケになって声を荒げると、凛の赤茶色の瞳からポロポロと丸い雫がこぼれ落ちた。
彼女は両手の拳を膝の上でぎゅっと結んで、涙を拭うこともなく俺をじっと見つめている。
「あ、いや、ホントになんにもなかったんだよ。見られたけど、触られたわけでもないし、その……ごめん」
「……せて」
「え?」
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