不思議な玩具を使って地味なOLを弄んでみた (Page 3)
囁くような声が発せられるとともに腕を掴まれ、俺の鼓動が跳ね上がる。
熱い吐息が耳にかかり、甘い匂いが鼻孔を擽った。
真っ直ぐに見つめるその瞳は、俺の心を射抜くようだ。
バレるわけがない。
自分にそう言い聞かせるが、彼女の腕に力が篭もって逃げ場を失い、同時に自信も失っていく。
座ったまま動こうとしない身体と同じく、頭も働いてくれない。
「あなた、ですよね?」
美沙の熱い吐息混じりの同じ台詞に、俺の心は凍り付いた。
彼女を弄んだのは、もう何回になるのか分からない。
最初はただの興味本位の実験台で、たまたまそばにいた大人しそうな彼女をターゲットにした。何人かの中の1人だ。
加減が分からず苦痛を与えてしまったこともあるし、やり過ぎて介抱せざる得なかったことも1回や2回じゃない。
痴漢騒ぎになりかけたこともある。
他の誰かとは違って唯一効果のあった彼女が電車を変えることもなく、ほぼ毎朝俺の前に現れたのは、俺にとってラッキーだろう。
俺はそのたびに円盤を弄った。
頬を染めて蕩けた表情を隠すように俯いてピクピクと身体を震わせる彼女を見るのが、俺の毎朝の日課であり楽しみだった。
でも、それも今日で終わりかもしれない。
いままで、俺が何か関係していると気付いていても、彼女からは何もしてこなかったというのに。
いま俺の隣に座り、逃げられないように腕を絡めて睨むその目は、俺を真っ直ぐに見つめている。
鼓動が早くなり、頭の中に無様な言い訳が駆け巡った。
「な、なんの、ことですか? また、体調が悪くーー」
「はい。少し休ませて下さい」
彼女はそう言うと俺に縋り付くように腕を抱きしめ、俺の肩に頭を乗せて目を閉じた。
柔らかな身体が密着してきて、トリートメントやシャンプーとも違う甘い匂いが鼻孔を擽る。
早鐘とはこのことかと思うほど心臓がびくつき、胸が痛い。
「いままで、ずっと我慢してきました。でももう耐えられない……」
美沙が目を閉じたまま囁くように言った。
誰にも聞こえない小声だが、俺には大声で叫ばれているようにすら聞こえる。
そんな彼女の声を聞きながら、俺はこの場から逃げ出す方法を考えていた。
もしこのまま警察に連れて行かれても、証拠はない。だが、円盤のことを追求されたら?
次の駅に着いたら走って逃げる手もあるが、それでは白状しているようなものだろう。痴漢被害は、被害者の方が圧倒的に強いので、逃げるなんてマイナスにしかならない。
かといって、「絶対に違う」と言うには美沙のことを弄び過ぎた。
いや、むしろ毎朝彼女が見せてくれるあの魅惑的な表情を俺が作り出していることを、否定なんかできない。
美沙の温かな体温が腕を通じて伝わってくる。好意が載っているのかと錯覚するほど温かく、彼女の鼓動も早まっているのが分かるほどだ。
背中に嫌な汗を感じながら、俺は彼女の次の言葉を待った。
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