ヒモの心得 (Page 3)
正解だったな、と太一はつくづく思う。
楓は身なりから太一が想定していたより更に収入が高く、太一を徹底的に甘やかしてくれる。
何もしないでだらだらしているだけの生活を許し、求めずとも十分な量の小遣いをくれる。
「太一がいてくれるだけでいいんだよ」と言って楓が見せるとろけたような笑顔は、職場などではおそらく見せたことがないのだろうと太一は思っている。
まるで子どもかペットのような可愛がられ方だと思うが、太一がそれを不満に思う訳もなかった。
この生活を維持するために唯一太一が努力していることと言えば、楓を満足させるためのセックスくらいだ。
楓が太一に望んでいるのは「セックスで満足させてくれること」と「他の女とセックスしないこと」の2つだけであり、そのどちらも太一にとっては、自分の安定した楽な生活のためなら徹底的に満たしてやれる条件だった。
そう言っても実際にセックスするのはだいたい土曜の昼間だけだ。
仕事が忙しい楓は平日は求められても基本的に応じないし、楓の方から求めることもない。
楓はやるならじっくりゆっくりたっぷり満たされたいタイプなので時間を気にせず過ごせる土曜が定番なのだ。
それも楓が出張や休日出勤のためにしない週さえある。
太一は性欲が特別強い方ではないが、とにかくモテたので経験は豊富だ。
セックスで女を本気で喜ばせれば女はますます自分を甘やかしてくれるので、自ずと女が喜ぶセックスのやり方にたどり着いていた。
それに太一はまだ20代なので、平均して月に3回くらいなら精力・テクニックともに全力を尽くせる。
今週は、土日に楓の仕事が入らないことがわかっていたので、おそらく「する」ことになるだろうと太一は予測しており、楓からもらった小遣いで精力剤を買って飲んでいた。
こんな風に気合いを入れたり対策をとらなくても、実際のところ楓には素直に欲情する。
いくら太一にとって楓が養ってくれる存在だと言っても、欲望を感じないのに生活のためだけにセックスしなければならないとしたら、苦痛だし続かないだろう。
太一の方も楓に対して、一緒に暮らしていきたいと思う愛情はあるのだ。
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