純情嫁の告白と誘惑 (Page 2)
亜弓は台所へ戻り、再び食器を洗い始めた。
どこか焦る気持ちで、誠はもらった水を一気にあおる。
亜弓は少女の頃と変わらず肌が白く手足は華奢だったが、表情はあの頃より随分朗らかになったようだ。
実際、あれから誠は何度も何度も亜弓を心の中で犯していた。あの日に抱いていればと思ったことも多かった。
それでもそうしなかった自分に教師として誇りを持つことでどうにか自分を保っていたのだった。
妙な下心が自分の中で騒ぎ出す前に寝てしまおうと考えた誠は、立ち上がって亜弓に声をかける。
「それじゃ、私も寝かせてもらおうかな」
「はい」
亜弓は最後の食器を洗い終え、水を止めた。
「客間にパジャマお持ちしますね、翔太さんので大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとう」
誠は自分の受け答えが不自然じゃないかと、どぎまぎしながらダイニングを出た。
亜弓が自分に言い寄ったのはもう8年ほども前のことなのに、大事な息子の妻になった女性なのに、自分は聖職者であるのに。
それなのにどうしようもなく亜弓が気にかかる。そんな自分を誠は情けなく感じた。
客間の和室に入ると、暗いが新品の布団が敷かれていることがわかった。
新婚夫婦の家に泊まりに来る者など、肉親以外はほとんどいないのだろう。
誠が部屋の中央で電気を点けようとしたその時、背後から亜弓が声をかけた。
「先生」
びくっとした誠が振り返ると、亜弓はパジャマを持って立っていた。
オレンジ色の常夜灯だけが灯る暗い部屋で、亜弓の白い首筋が浮かび上がるように見えた。
「っ、ああ、ありがとう」
パジャマを受け取ろうと近づいた誠に、亜弓が突然抱きついた。
「お、おい亜弓さん…っなにを」
「せんせい」
誠の胸に顔を埋める亜弓の、表情を読み取ることはできなかった。
誠は戸惑いながらも、こういう日が来ることをどこかで期待していた自分の欲望に気づいてしまった。
「やめなさい、亜弓さん」
亜弓は抱きついた腕にぎゅっと力を込める。
石鹸と花の香りが混ざったような、なんとも言えない女の匂いが誠の鼻をくすぐり、誠の理性を少しずつ崩し始めていた。
「覚えてますか?あの時のこと」
「いや…」
「私もう、子供じゃないです」
亜弓の声は小さかったが、至近距離で囁かれると誠の心には大きく響いた。
「君は、翔太の」
「一度だけ私を抱いてくれませんか?思い出にしますから」
あの時と同じ台詞に、誠は堪えていたものが溢れ出すのを感じた。
「亜弓さん…」
「あの時みたいに、堺って呼んでください」
彼女の旧姓、つまり教え子だった頃の姓が、誠の最後の理性の壁を壊した。
「さかい、堺っ…」
たまらず誠は亜弓の身体に両腕を回し、きつく抱き返した。
「っ、ん…先生…」
レビューを書く