遠い国からやってきた褐色の少女 (Page 6)

「ヴァォォンあぁん!」

 一際大きな声を上げるとのけぞり、そのまま俺の方に体を預けるように倒れてきた。
 小刻みに痙攣しているところを見ると、相当深い絶頂を味わっているらしい。

 ようやく呼吸が整ってきたのだろう、フェリパは俺の目をじっと見つめてきた。

「マダ、わからない?」

 そんなフェリパの顔を見ながら、やっぱり思い出せないな、俺は呟いてしまう。

「えー、ムカシ、サッカーしたことわすれたノ? トッテモ、たのしカッタネ」
「えっ?」

 不満そうな声で、ふと繋がるものがあった。
 でも、その子は確か。

「もしかして、お前フェリペなのか?」
「アー、そっカ、あのトキは、ソーいってたネ。ごめんネ」

 思い出した。
 小さいとき近所に住んでいたブラジル人一家がいた。
 そこの子どもとよくサッカーをしていたことを。
 そして、自分がずっと勘違いしていたことに気付いた。

「フェリペって女の子だったのか……。っていうか、フェリパか」
「オトコのコじゃないと、ナカマにいれてもらえないと、おもったのヨ」
「あー、そうかもなあ、あの頃は女と一緒にいるとからわかれたからな……」

 懐かしい小学生の頃の思い出がよみがえってくる。
 しかし、その思い出とは裏腹な状況になってしまっていた。
 
「ヤットおもいだしてくれた……」
「まさか、あのフェリペとこうなっちまうとはなあ。……で、何をしに日本に戻ってきたんだ?」

 俺の言葉にフェリパは呆れたように溜息を吐く。

「わかンないノ?」
「ああ、分かんない」

 俺の投げやりな返事を塞ぐように唇を合わせてきた。

「オヨメサンになるためだヨ! そのためにリュウガクしにきたんだヨ」

 そう言って満面の笑顔を浮かべたフェリパを眺めながら、俺は肩を竦めた。
 どうやら観念しないといけないらしい。

(了)

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