遠い国からやってきた褐色の少女

・作

朝起きて飛び込んできたのは褐色の女子校生? 女子校生はフェリパと名乗り、どうやら昔なじみらしい。超積極的なフェリパの勢いに流されるように、なし崩しにセックスが始まってしまう。情熱の国ブラジルで育っただけあって、フェリパの体は最高だった。そんなフェリパに溺れそうになる俺の明日はどっちだ?

 ドンドンドンと激しいノックの音に目が覚めたのは午前十時。
 せっかくの日曜日なんだから、寝かせてくれよと思いながら、俺は布団から起き上がった。

「何かアマゾンで注文したっけか?」

 Tシャツにジャージというラフな格好だが、どうせ宅急便だろうと高をくくって扉の前に立つ。
 やはり相も変わらずドアを叩く音は変わらない。

「はいはい、今出ますよー」

 そう言ってドアを開いた瞬間、俺は下腹部に強い衝撃を受けていた。
 はっきり見えないが何かが飛びかかってきたらしい。
 訳が分からないまま床に倒される。
 掛けていた眼鏡が吹き飛んでしまったので、目の前の相手が見えなくなっていた。

(強盗かよ、最悪だな……)

 誰かよく分からない相手にのしかかられたまま、しまったと思っても後の祭。
 そもそも、何でいつものようにチェーンロックを掛けないまま開けてしまったのか。
 後悔だけがぐるぐると頭の中を巡っていた。

「い、命だけは、お願い……」

 とりあえずそう言ってみるのだが、それにしてはリアクションがない。
 腰に抱きついたままのしかかっている何者かはあまり重くない。
 というか、むしろ軽いし、なんだか柔らかくて良い匂いがする。
 疑問に思いながらも、床に置いている眼鏡を手探りで見つけ、何とか装着した。
 俺の視線の先にいたのは、ボブカットの女子校生だった。
 だけどそれは普通の女子校生ではない。

「えっと、君……、誰?」

 咄嗟にそういう言葉しか出てこない。
 俺の声に反応するように顔を上げた女子校生は悲しそうに上目遣いしながら口を開いた。

「ユータロー、フェリパのこと、おぼえてナイ? ……せっかく、ブラジルからかえってきたノニ」

 若干片言の日本語、彫りの深い顔立ちに褐色の肌。
 日本人でないのは一見して分かったが、まさかブラジル人とは思わなかった。
 正直、女子校生にすら知り合いがいないのに、ましてやブラジル人女子高生とか。
 正直情報量が多すぎて頭がパンクしそうだ。
 こんなさえない大学生のところに、君は何しに日本へやってきたんだと聞いてみたくなってしまう。

「フェリパねえ……」

 俺が悩んでいる間も、フェリパと名乗る女子校生は、アメジストのような紫がかった瞳でずっと見つめていた。
 これだけ可愛い子だったら、きっと覚えているはずなんだがなあ……。
 足りない頭で記憶を探り続けるが一向に何も引っかからない。
 それよりも、気になるのはぐいぐいと当たってくる水風船のような弾力だ。

「えっと、思い出すから、ちょっと離れてもらってもいいかな?」
「ユータロー、ワタシのことキラいになったノ?」

 好き嫌いの問題ではなく、このままくっつかれていたらどうにかなってしまいそうだった。
 現に、起き抜けの我が息子は元気いっぱいで、いつ噴火してもおかしくない。
 少し鎮めるためにも、少し距離を取ってもらいたかった。

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