堅物教師と片思い (Page 3)
ひとり暮らしの隆の部屋はものが少なく殺風景だったが、やはり本棚の中にはぎっしりと専門書の類が並んでいた。
「ふふふっ」
「何がおかしい」
出されたお茶に口をつけ、千夏は笑った。
「さっきの、思い出しちゃって」
教室で2人が抱きしめ合っていたのはほんの数秒のことだったが、隆ははっとしてすぐに千夏の身体を引き剥がした。
そして「だめだ、教室でこんなこと…!」と慌て出し、とにかく場所を変えて話し合おうと提案してきた。
「…おかしいか?いくら俺と福田は大人同士だといっても、学校であんなことするのは適切じゃない」
「ふふふ…ふふ、はい、そうですね」
「堅い、つまらない男だと思うだろう」
「…でも、先生のそういうところが好きなんです」
「…っ」
不意にじっと目を見て、真顔になって千夏は言った。
この部屋に来るまでに、隆の車の中で互いの気持ちについては打ち明け合っている。
しかし改めて目を見て言われると、どきんと心臓が大きく鳴る。
「学生時代に知り合った同世代の男の子たちは、ちゃらちゃらしてていつでも女の子のことばかり考えてた…私が変な人にばっかり会っちゃったからかな?」
苦笑いをして千夏は俯いた。
「でも、だからこそ…先生みたいに、ちょっと堅物なくらいの人が私は好きなんだって改めて思い知ったんです」
「…そうか」
高校時代から、千夏はよくもてていた。
しかし言い寄ってくる男は皆、千夏の派手な顔立ちと華奢に見えて豊満なところのある身体に惹き寄せられただけの虫のようだった。
現に千夏とセックスできないとわかるとすぐに離れる男ばかりだったのだから、千夏の「偏見」は強化されるばかりだった。
「真面目すぎて、損したことの方が多かったと思ってきた…でも、福田にそう言ってもらえるなら、報われたような気がする」
「報われたのは私の方です。長年の片思いが、やっと報われた」
2人は見つめ合って、笑い合った。
そして隆はゆっくり千夏に口づけた。
こんなに幸福な瞬間があるのかと、2人ともが感じていた。
「…よし、送ろう」
「えぇ!?」
唇を離して感慨深げに一度頷いた隆が言うと、千夏は不満げな声をあげた。
「どうした」
「帰り、たくないって…これも私が言うんですかぁ?」
泣きそうな声で嘆いた千夏の恥ずかしそうな顔を見て、隆は自分が思い当たらなかった可能性に気付いた。
そして普段の姿からは考えられないほど顔を赤くして、口ごもる。
「いや…それは…さすがに早いだろ、今日交際するって話がまとまったばかりで」
「だから、早くないんですって!」
並んで座っていたソファーに、千夏は隆を押し倒した。
「っ…おい、」
「7年前から先生のこと好きだったの…全然早くなんかないでしょ?」
めちゃくちゃ最高です!
行為が上手い理由からのオチに悶えた。堅物キャラまた書いてください
もち さん 2023年4月24日