目隠し鬼 (Page 3)

 復員して、清次郎が最初に驚いたことは汽車が走っていることだった。

 あれほど空襲で痛めつけられていながら、細々とした糸を手繰るように列車は線路を走っている。

 清次郎は満員の列車の中で窓際に立ち、外を眺めながら戦争の痕跡を見つめていた。

 彼が向かっているのは数多くあった疎開先のひとつである。そこに兄とその妻がいた。元々は病弱な兄の静養地であったが、そこにも戦禍は及んでいた。

 幸いにも敵機は兄がいた療養施設には機銃の斉射も爆撃も行わなかったが、幾つもの家が焼かれ、幾人もの非戦闘員が土塊のように顔形も分からない死骸にされた。

 汽車の終点で下車し、清次郎は土煙の立つ道を歩いていく。

 空には雲一つなく、戦地で彼を痛めつけた日差しとは違う熱さで持って太陽は大地を照らしている。

 延々と濃い緑が続く道の所々で、季節外れの雪が降ったように白くなった山がひょいと顔を出す。敵機に焼かれ真っ白になった山である。

 それらを幾つか交わし、谷あいの道を半日歩き続けて清次郎は目的地に辿り着いた。

 田畑と倒壊した家や焼け崩れた家、その間に奇跡的あるいは皮肉にも殆ど損傷のない家屋が斑に残る村内を抜け、やっと療養施設の門を目した。

 受け付けで来訪の目的を告げ、ちびた鉛筆で入館管理のノートに署名する。

 静かな施設内を歩き、清次郎は目的の扉の前で軽く咳払いをした。わざとだ。緊張をしたわけではない。しかし、これをしないといけない。

 それからノックをして、扉を開け、個室にいる。

 個室の中には寝台と椅子が一脚あるだけ。他にめぼしいものはない。

 彼が室内に入ると、寝台の上で寝ていた女が振り向いた。

「正一郎さん?」

 呼ばれ、清次郎は幾分か声を潜めて返事をする。

「ああ」

 寝台の上で女が微笑む。その顔の上半分ほどに包帯が巻かれ、視覚は完全に遮られていた。しかし、彼女は入室前の咳払いとノックの調子で、入室した人物を夫である正一郎であると判断したのだ。

 そして、そう仕向けたのは他ならぬ清次郎である。

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