モノクロに色付く世界 (Page 3)

 さらに成実はページをめくる。下唇を噛み、じっと写真に収められた緊縛された女性達を目で追う。縄の軌跡を視線で追い、無意識の内に指先でそれをなぞっている。羨むような眼差しには、仄暗い快感が渦巻いていた。
 
 後ろめたい熱が体の芯に灯っていく。次第に熱は体に広がっていき、下腹の奥を疼かせる。
「はぁ……、ふっ」
 スーツの上から縄が触れた場所を手でなぞり、成実は緊縛された感触を追憶する。だが、それだけでは満足できず、彼女の手は胸から腹へ、そして女陰へと降下していった。
 
「んっ、うぅん、はぁ、くっ」
 吐息を噛み殺し、成実はもどかしくパンツとショーツに隔てられた秘所を嬲る。
「あ、ああぁ、ひぅ」

 次第に嬌声を抑えられなくなり、唇を噛んで堪えるが左右の手はアルバム、そして自らの秘所から離れない。
 
 こんなことをしている場合ではないのだと、成実の頭の中で理性が必死に叫ぶ。しかし、その理性の叫びが背徳感を煽ってしまい、後ろめたい快楽が抑えられない程に溢れ出てくる。
「あっ、あっああぁぁぁ」
 背を反らし、ぎゅっと脚を閉じて成実は絶頂に堪える。食いしばった歯の隙間から喘ぎ声が尾を引いて零れた。
 
 ひくひくと腰を痙攣させ、立っていられなくなった成実は床にへたり込む。荒い息をしながら、自慰でこれほどまで深い絶頂に至ったことがあるだろうか考えた。いや、男性と一夜を共にした時すら、これほどまでの快感は得られなかった。
 ブラウスの上からぎゅっと両の乳房を揉みしだく。
 
「あうぅぅ」
 痺れるような快感が脳まで一気に駆け上がった。
 だが――
 
「物足りないでしょう?」
 冷や水をかけられたような心地で振り返ると、そこには穏やかな面持ちの佑司がいた。
 さっと成実の顔から血の気が引く。
 
「あなたが学生の頃から知っていましたよ」
「いや、やめて」
「どうして、私がいると分かっている学校に赴任してきたのですか?」
「それは、たまたま司書の募集があったから」
「確かに募集は偶然だったかもしれませんね。しかし、前職を辞めてまで応募する価値が果たしてあるでしょうか」
「わ、わたしにはあったんです」
「そうですね。確かに」

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