元カノは人妻キャバ嬢 (Page 2)

何度かループしている夫の愚痴と、ほんのり感じるDVの気配に、和也は口を挟むべきかどうか迷っていた。
未来は酒に強かったが、今夜は深く酔っているように見える。

「なあ、未来…お前の旦那」

自分に何ができるのか、この3週間和也はいろいろ考えていた。
しかし口を出すための覚悟を決められているわけではなかった。

「あと2時間したら娘のお迎え行かなきゃなんだ。私ちょっと飲み過ぎたから、どこかで少し休みたいかも」

和也が話し出したのを遮り、未来は言った。

「ああ、お迎えか…」

未来が娘を預けている夜間保育はこの歓楽街付近にある無認可の保育所だが、それでも四六時中酒に酔っている夫に娘を任せて出勤するよりずっとましなのだと未来は言っていた。

「休むって、じゃぁ」

未来の言葉を反芻しながら、和也が少し緊張した顔で問いかけた。
傷ついた昔の恋人にこのタイミングでよこしまな期待を抱こうとしている自分が情けない。

「ここ出たとこにホテルあった」

未来が、どうとでも取れるようなうつろな表情で淡々と言った。

「お前、言ってる意味わかってんのかよ」

「…母親になった私の身体はもう、抱けない?」

自嘲気味に笑った未来の顔が痛々しい。
和也と付き合っていた頃は、こんな卑屈なことを言う女じゃなかった。
それだけ自信をなくすような関係を夫と築かされてきたのだろう。

「そういうことじゃなくて、お前結婚してるだろ…道義的に考えて」

「風俗だったらもっと稼げるんじゃないとか言う旦那だよ?」

「っ…」

和也は絶句した。
大事にされていないとかいう次元ではない。妻を道具としてしか見ていない男のために、未来は必死で働いているのか。

「私の貞操なんか、気にしてるわけないじゃん…私だって少しくらいさあ…」

夫の発言を自分で口にしたことで改めて傷ついたのか、未来はうっすら目に涙を浮かべていた。

「もういい、それ以上言うな…行こう」

和也はたまらず、向かいに座る未来の手を握った。
そしてその手を引いて店を出ると、話に出たすぐそばのホテルに入って行った。

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