息子のいぬ間に (Page 2)

颯太の母から颯太に電話が来て、孫の斗真と遊びに行きたいと言われたのはほんの3日前のことだ。
普段は隣の市に住んでいる颯太の両親が息子夫婦に干渉してくることは全くなく、適切な距離感で良好な関係を築いている義父母からの突然の申し出だったので、葵は少し面食らったものの今回は甘えることにした。

息子の斗真は人見知りもせず、3歳半になった近頃は言葉も好みもしっかりしてきたし、たまにしか会わないじいじとばあばも認識して懐いている。

祖父母と言っても颯太の両親はまだ現役世代で若く、幼い孫と3人だけで出かけて多少振り回されても大丈夫なだけの体力はあるだろう。

良い意味で放任してくれる夫の両親をこちらの都合で使ってしまうような申し訳なさはあったが、颯太のひとことで葵は思い切れた。

「葵が嫌だったら断るけど…俺は今回甘えてもいいかなって思う」

母からの申し出に回答を一旦保留にして葵に相談したとき、颯太は言った。
確かに斗真が産まれてから、葵も颯太も斗真中心の生活を送るようになっていた。
子育てをする多くの夫婦がそうであるように、2人で過ごす時間は減り、営みも減った。

「正直俺は…葵と2人で1日過ごしたい、久しぶりに…」

息子は大事だが、疲れは取れない。
疲れている時に限ってむくむくと湧き上がる性欲も、息子の泣き声にかき消される。
そんな日々の中で、久しぶりに性的な温度のある颯太の声を聞いて、葵は忘れていたものを思い出すようにじわじわと欲望が湧いてくるのを感じた。

「じゃぁ…えっと…甘えさせてもらおう、かな?」

葵がそう言って目を合わせると、颯太もはにかむように笑った。
きっと同じことを考えている。
そう思える表情だった。

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