兄さんの妻 (Page 8)
背骨を一つ一つなぞり、辿りついた双丘に手のひらを這わせる。里香の瞳に情欲の炎が燃えた。彼女はわずかに腰を浮かせると、上目遣いになって俺に懇願した
「っ……♡――お願い、します。私を使ってください、私のナカにぶち込んで、ぐちゃぐちゃパンパン犯してください、いっぱいナカで出してくだしゃ、――ぁあああぁぁあぁあああぁああああんっ♡」
「了――解っ!この、ド変態めっ!」
「――う゛ぁ゛ああ゛っ!?あぁぁっ、ぁあぁぁ゛あぁ、ひぐっ!?お゛っ♡んぉ゛ぉぉお゛お゛お゛っ♡」
再び硬度を取り戻した肉棒を突き立て、まるでオナホのように暴力的なピストンを繰り返す。汗と涎をまき散らし、里香は泣きながら笑っていた。俺たちは朝から晩まで暇さえあれば互いを求め合い――里香は俺の前から去った。
義姉と再会したのは、一年後のことだった。
「お久しぶりです――これ、お祝いの」
高級マンションの上階、壁一面の大きな窓から柔らかな日差しが差し込んでいた。統一されたデザインの家具に観葉植物、塵一つない部屋は洒落ていたがどこか孤独を感じさせる――その中で彼女が佇んでいた。新しい命を抱きかかえて。
「ありがとう翔くん。嬉しいわ――」
義姉さんがはにかんで笑った。髪を黒く染め、短くした彼女の雰囲気は明るかった。赤ん坊をあやしながら、俺をソファに誘導した。
「大丈夫です。すぐに帰りますから」
「そう――お仕事はどう?大変?」
「中途入社でまだ半年ですからね。先輩にしごかれてばっかですよ」
祝いの品をダイニングテーブルに置き、肩をすくめてニヤリと笑う。義姉がクスクスと笑うと、赤ん坊も笑った。
「甥っ子にも笑われるなんて……」
「うふふ、面白いでちゅねぇ――あ、そうだ。この子、抱っこしてみる?」
「え――いいんですか」
「もちろんよ!ほら、おじさんが抱っこしてくれるって……」
差し出された赤ん坊を恐る恐る抱っこする。ふくふくとした頬、まだ生えていない歯、切れ長の瞳――どこか既視感がある。そう、例えば朝、顔を洗う時に確認するような――。
「可愛いでしょう。私とあの人の子よ……」
義姉が恍惚とつぶやいた。その瞳にはきっと、兄さんしか映っていないのだろう。
――血がにじむ努力をしても得られないモノがある。どんなにあがいても届かない場所がある。義姉さんは俺を通して自身の望むモノを得た。そして俺も――。
これは、愚かな二人の物語だ。
同じ痛みを抱えた者同士の、傷の舐めあいだ。
(どんなにあがこうとあの男には届かない。それでも……俺はこれで満足だ)
(了)
レビューを書く