悪徳詐欺師 VS 激重フラれ女！ ～ヤるのはどっちだ～

　ぬるくなった水に口をつけ、花村エミはため息をついた。

「私の何がダメだったのかな……」

　残り半分程になったパフェをぐちゃぐちゃとかき混ぜながら、奥村あゆ子は心配そうに問いかけた。

「ねえ、マジで大丈夫？」

「私の何が……」

「全然話聞いてないし」

あゆ子がドロドロになったパフェをラッパ飲みしている頃、エミは揺れる水面を見つめながら絶望に打ちひしがれていた。

花村エミ、27歳。都内でそこそこの会社に勤めるごく普通のOL。周りの同僚は続々と結婚、出産で退職し始め、彼女も結婚に対して焦りを感じつつあった――というか、結婚する予定だった。

「先輩、どうして……っ！」

「だからやめとけって言ったじゃん。騙されてるよって。……まさか10股してるとは思わなかったけどさ」

「うわあああん！」

エミにはつい一昨日まで彼氏がいた。入社当時、エミの教育係だった先輩である。付き合い始めたのは彼と出会って半年もしないうちから。3年前に彼が退職、会社を立ち上げた後もエミは一途に慕い続けた。

「会社立ち上げるのにお金が欲しいっていうから出資したし、経営が上手くいかないって言うからお金貸したし、結婚費用が足りないって言うから保険崩したのに……っ！」

金曜の夜、先輩と付き合い始めて5年の記念日だった。エミはわざわざ有給をとり、手土産に手作りケーキを持参し、サプライズで恋人の家に向かっていた。

まだはっきりとプロポーズはされてないけど……、挙式費用とか旅行先とかの話もするし、今日こそプロポーズされちゃう！？　入籍しちゃう！？　この際おめでた結婚でもいいかも♡　などと幸せプランを妄想しながら……。

彼女の足取りは軽かった。三か月前から練習し続けたケーキはプロ顔負けの出来栄えになっていたし、新しい下着も身に着けて夜の用意もバッチリだった。そんな浮かれ切った彼女が見た光景とは。

「だからって乱パはあり得ねーっしょ！　どんだけモテるんだよ！　あ、すみませーん。追加の注文いいですか？」

見知らぬ裸の美女と見知らぬ男がセックスしている真っ最中。そして――エミよりも若くてスタイルが良い美女二人にフェラチオをされている恋人の姿だった。

混乱し、取り乱しているエミにかけられたのは元・恋人による非情な一言だった。

『あー、お前、エマだっけ。お前さ……重いんだよ！』

それから先の事をエミは覚えていない。持参したはずの手作りケーキはどこかに消え、めいっぱいお洒落した洋服の所々に生クリームがついていた。スマホには元恋人からの怒りのメッセージが大量に届いており、恐怖に怯えたエミは速攻でブロックした後に布団に包まって一日中泣いていた。