母子再会と10年前の落とし前 / オンナ絡みの揉め事解決屋 2 (Page 7)
「ぎゃぁぁぁ」
はっきり言うと、この攻撃は腕を折るよりも痛いとされている。だが、俊一はそれだけでは止めずに、着地すると右回し蹴りを室井の側頭部へ決めた。
これで普通ならば、意識が飛んで戦意も吹っ飛ぶ。普通なら…。
ところが室井は、生きている右腕を俊一の首に巻き付けて頭を人中にぶつけてきた。
これは急所中の急所で、下手すると命のやり取りにまで発展しかねない。それから室井は、そのまま地べたへ倒れ込んで、関節をキめようとしていたのだ。
無意識なのか意識的な攻撃なのか分からないが、「つきあってらんねぇよ」と、俊一は首を抱えこまれた段階で裏投げを放った。プロレスのバックドロップの原形のような技である。
それも、投げながら体をひねってトルネード状にしてだ。
これで、あの日の大宮駅前の「落とし前」を着けたというものだ。
室井は駐車場でのびているが、俊一も顔面が血だらけなうえ、ヘッドロックされた前頭部が鬱血してスキンズキンと痛んでいる。明日になれば、青タンが確実に出てくるだろう。
俊一はメールの履歴を見て「洋子さんと子供たちは無事に対面。今、爺様の家に届けたよ」と、仕事が終わった事を知った。
それから俊一は、うしろに向かって「(爺様のボディガードの)佐久間さん、見てるんだろ? 悪いけど爺ぃの家まで乗っけて行ってくれない?」と、声をかけたのだった。
メールはもらったものの、仕事がきちんと終ったのかの確認をしなくてはならない。
「それにしても、県警の『鬼の室井』に真っ向勝負で勝つとは。単なるナンパ野郎の成れの果てじゃないですね」
「必死こいただけだよ。ウチの仕事はここまでだから、あとは弁護士先生とうまくやってね」
こうして、姉弟を無事に届けた事を確認して俊一の仕事は終了した。とりあえず、報告書と経費精算は明日にするとして、俊一は雑居ビルのネカフェ跡に帰って行った。
3階でエレベータを降りると、そこには上の階でパブ「桃源郷」を経営する美也子が待っていて「お疲れ様でした」と言って、ツメシボ(冷たいオシボリ)を手渡してくれた。
ひょんな出来事から肉体関係を結んで以来、「セフレ以上、妻未満」の間柄を続けている仲だ。
「どうしたの?」
「“どうした”じゃないわよ。大丈夫なの?」
「美也子のチャイナ服を見たら回復するよ。店が終わったら来てよ」
「珍しいわね。あなたが弱音を吐くなんて。でも、どんどん頼っていいのよ。美味しいものでも作ってあげるわよ、チャイナ服のままで(爆)」
「待ってるけど、下着は脱いできてくれる? チャイナ・ドレスのスリットから美也子のマンコを指で悪戯する都合があるから」
こうして俊一は深夜まで仮眠を摂るべく、2人用の個室をブチ抜いて作った寝室の簡易ベッドに倒れ込んだのだった。
(了)
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