大きすぎる僕ら (Page 2)
ペニスは大きい方がいいとか、結局女は巨根にメロメロになるとかいう言説は全部、男の作り出した幻想だと修は思っている。
なぜなら、修自身が人並み外れた大きさのペニスのせいで、女性に拒絶されることの多い人生だったからだ。
修は30歳になるが、これまでセックスで女性をうまく喜ばせたことがないと自分で思っている。
その原因は、大きすぎるペニスのせいだ。
修は特別に美男子ではないが、高身長で運動神経が良かったおかげで若い頃からそれなりに女性には好かれた。
しかし交際して、いざセックスに至ると女性に幻滅されるのが毎度のことだったのである。
「大きいんだ」と打ち明けると、最初はどの女性も笑う。
「大丈夫だよ」とか「自慢?」とか「大きい方がいいんじゃない?」とか、全員言った。
しかし、いざ脱いで勃起したペニスを見ると、全員の目の中に明確に「怯え」が滲んだ。
彼女らの想定よりずっと大きかったそれに、恐怖心を隠せなくなる女性たちの顔を見てしまうと、修は悲しくなる。
それでも我慢して受け入れてくれた女性もいた。
しかし交際相手の顔が快感ではなく痛みで歪むのを見て、そのセックスが楽しいものだとは修の方も思える訳がない。
相手は痛がっているのに自分の方は膣の締め付けで快感を感じているのが、罪悪感にもつながった。
前戯を頑張ってみたり、時間をかけてみたり、あれこれ試行錯誤した時期もあったが、結局は性の不一致で別れる結末に至ってばかりだった。
そんな修が久しぶりに本気で交際しようと思えたのが綾奈だった。
綾奈は職場の同僚で、ひとつ下の後輩だ。
同じ部署で一緒に仕事をするようになって1年、豊満な身体とそれに似合う柔らかな笑顔、そしていつもにこにこして明るい人柄に惹かれて付き合い始めた。
綾奈のような包容力のある女性に、自分のコンプレックスごと全部受け入れてほしいと思うのは甘えだとわかっていたが、これまでの苦い経験からそうなってしまうのは仕方がないと自分に言い聞かせた。
現に付き合ってみると綾奈は楽しく朗らかな性格と明るい笑顔で、修の欠点もいろいろと受け止めてくれた。
しかし実は嫌なことははっきりと嫌と言い、問題がある時には話し合おうとする姿勢も持った芯のある女性だった。
そんなところも含めて、付き合い始めてからも綾奈のことをどんどん好きになっていった修だったが、そうであればこそセックスに踏み切れずに3ヶ月が経ったのだ。
綾奈も、自分のペニスに慄いてしまったらどうしよう。
自分のペニスが、女性から見ると「凶器」になることを痛いほど思い知ってきた修は、綾奈を好きになればなるほど拒絶されることへの不安が募った。
それでもどうしても、我慢できない。
できるだけのことはやってみて、どうしても無理なら諦めよう。
いずれにしてもこれ以上セックスせずにいる期間を延ばすことはお互いにとって良くない。
いろいろ考えたが、要は綾奈を抱きたいというただその欲望が限界まで高まっただけのことでもある。
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素敵
幸せそうな性行為に笑みが思わずこぼれてしまいました
ななし さん 2023年7月2日