大家さんは未亡人 (Page 2)
亮が住むアパートの1階の端の部屋に、大家である早苗も住んでいる。
元々は夫の名義で所有していた単身者向けの間取りのアパートで、夫婦はアパートとは別に居を構えていたが、3年前に夫が他界して早苗1人になったので、夫婦で暮らしていた家の方を手放してこのアパートの1室で自分も暮らすことにしたのだった。
亮が住み始めたのは大学を卒業して就職した2年前からで、つまり初めて出会った時から亮にとって早苗は「未亡人」だった。
アパートと言っても築浅で小綺麗にしてあり、男の一人暮らしにとってはむしろ良い環境と言えるこの部屋はもちろん気に入っているが、亮がこのアパートを気に入っていたのはやはり早苗の存在があるからだ。
優しくおっとりとした口調の美人で、その微笑みは愛らしい。
なにより豊満なボディラインは亮の同世代の女性には見られない豊かなセクシーさがあって、亮の欲望をそそった。
その大きな乳房に顔を埋めて甘えてみたいと男なら誰でも思うようなずしりとした乳房の存在感は中でも格別で、当然亮もその点に夢中だ。
早苗は未亡人だから現在は独り身で、だから真剣に口説いて悪いということはもちろんないが、アプローチした結果玉砕したら恥ずかしすぎてこのアパートにもいられなくなる。
あんな高嶺の花に告白してうまくいくという気は、亮はどうしてもしなかった。
それでも家賃を払う時や日常の何気ない瞬間で顔を合わせれば笑顔で挨拶をしてくれる、その笑顔をもらえるだけでも幸福だと思うくらい、亮は日に日に強く早苗に惹かれていった。
しかし、そんな穏やかな片思いの日々が音を立てて崩れ落ちていったのが1ヶ月前のことだった。
あの日、亮はやはり家賃を手渡しで支払うために早苗の部屋のインターホンを鳴らした。
その時、中から出てきた早苗の姿を亮は1ヶ月経った今でも忘れられない。
その時早苗は、下着に薄いガウンを羽織っただけの姿で玄関の戸を開けたのだ。
大きな乳房の谷間は丸見えで、腰の辺りでガウンを前に寄せて腹の素肌を隠してはいるが、透ける素材のガウンが艶かしく彼女の全身を覆っているだけでほとんど裸の状態に見えた。
あまりのことに思わず亮がうつむくと、玄関には男物の靴が見えた。
「あら、坂本さん」
普段とはまったく異なる、気だるげな表情で、少し掠れた声で早苗は言った。
あっけに取られた亮が何も言えずに家賃の封筒を握りしめていると
「お家賃ですか?」
「え、あ…」
「いただきますね?」
亮の細かく震える手から封筒を受け取り、手早く中を確認すると早苗は小さく礼をした。
「確認しました、では来月またお願いします」
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