上海の未亡人
上海に単身赴任したのは40才台半ばのことでした。仕事は暇で、会社が終わる午後6時には退社していました。マンションに帰ってもやることがありません。一時代前の中国駐在員はゴルフか女の子にハマると決まっていました。習近平さんの倹約令で多くのゴルフ場が閉鎖され、残るは女の子しかありません。
中国で、手っ取り早く女性をゲットしようと思えばナイトクラブです。ところが上海のクラブはべらぼうに高いのです。ましてやホステスさんを彼女にすると大変です。週に1回はお店に行って、彼女の売上を上げてやらなければなりません。毎月のお手当を渡し、靴や服をねだられ、高級レストランでの食事をせがまれると完全に破産です。
そんな時、行きつけのバーのマネージャーが耳よりの話を教えてくれました。「XJバンク」というものがあるというのです。XJは女性を指す小姐(シャオジエ)の頭文字です。
「XJバンク」とのコンタクトは容易でなく、まず教えられたメールアドレスに携帯番号と名前を連絡します。48時間ほどで私の携帯に電話があり、落ち合う場所と時間を伝えられました。これはかなりの冒険でした。中国では性行為が成立していなくても、買春の意図があったとされれば違法です。恐るおそる指定の場所に行くと、心配するほどのことはなく中年のオッサンが迎えてくれました。
オッサンは「XJバンク」のシステムから説明してくれました。「お試しコース」「デートコース」「リクエストコース」の三つがあると言うのです。「お試しコース」は「XJバンク」が信用できるかのトライアルで、朝まで一晩楽しんで2000元(2020年のレートで約3万円)です。
「デートコース」は女の子と車が提供され、一緒に半日観光できますが、昼間の普通のデート以上は約束されません。最後までいく確率25%と言ってましたが、お金しだいでしょうね。
最も興味をそそられたのは、「リクエストコース」でした。対象とする女の子は女子大生、CA、普通のOLなどお好みの子を探して来るので、愛人契約を結べると言うのです。一番人気があるのは、田舎から何も分からない子を連れて来て磨き上げて、現地妻にすることだそうです。
「リクエストコース」で女の子に渡すお手当は、毎月5万元(約75万円)が相場のようでした。「XJバンク」への支払いは一時金でお手当の2カ月分と、農村に女の子を探しに行く実費が必要になります。
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