シャワールームの男と女 / オンナ絡みの揉め事解決屋④ (Page 8)
そういえば、彼女の祖父は在日台湾系の顔役。今は小さな薬局を営みながら、そのビルの2階で拳法を子供たちに教えているのだった。
「美也子もその流れか! く~、痺れるねぇ!」
雑賀は感嘆の声をあげながら振り向くと、そちらはそちらで里美が2人の警備部員を相手にして奮闘している姿が見えた。
猫足立ちからの上段回し蹴り、そこから一連の動作での後ろ回し蹴りで2人の警備員を倒していたのだった。
「パトカーが来るから、早く乗れ!」
2人の猛者に見とれていた雑賀は、中村の叫びに我に返りタウンエース改に飛び乗った。中村のドライブするバンは朝のラッシュの中、指定ポイントに各々を降ろしていく。クルマは中村が独自に入手したパーツを多用して作り上げたワン・オフだ。速いに決まっている。
その車内から雑賀は、榊に“終了の報告と後処理のお願い”をして、取り敢えず大宮で降りてシティホテルへ潜伏した。
美也子は、祖父の薬局へ。里美は、夫と子供の待つ雑賀の近くのホテルへ。
榊からOKがでるまでは、それぞれ隠れている段取りになっていたのである。
雑賀は自分のPCを部屋に持ち込んであったので、そこで山川への報告書の作成と添付する写真の整理をして過ごした。
その報告会は榊の事務所で行われて、雑賀は報告書提出と守秘事項に関する誓約書にサインをして、一件落着となったのだった。
山川は、
「雑賀さんでなければ、ここまでは調べられなかったでしょう。ありがとう」
と、右手を差し出してきて米国式に握手をして別れた。
蛇足ながら、ジムの方の損害はたいしたモノではなく、逆に公になると「セキュリティが甘い施設」と烙印が押されてしまうので、乱闘騒ぎは不問に。ケガをした警備部員には、多額の治療費・見舞金が支払われて、それで納得したようだ。
「そういえば、チームの連中にギャラを振り込まなくっちゃな」と思いながら、雑賀は4日ぶりに自室のある雑居ビルに帰ってきた。
R34スカイラインGT-Rが駐車場に入ってくるのが、美也子の店からは丸見えなので、スグに雑賀の部屋に降りてきた美也子は、室内に入ると黙って雑賀に抱き着いてきた。
「シャワールームの続きをしましょ。今スグに」
美也子はキスをしながら器用な手つきで、チャイナ服をサラリと床に落としたのだった。
(了)
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