異世界@そろそろキミが来る頃だと思ったよ (Page 2)

「大隊整列っ!!」

 後から来た蒸気馬車群を、降りた団長が誘導し整列させる。

「シスターの皆はこちらへ!」

 教皇の女性も、荷車から降りてきた修道女たちをまとめ始めた。
 二人とも手際が良い。
 やはり俺の教え子だからかな、と少しうぬぼれてみる。

「せんせい、ホントにこの湖にドレイクがいるの?」

 と、王女が俺の左にすり寄って来て尋ねた。
 こんなにキレイなのに、と付け加えて。

「ああ居るよ、間違いなく」

 ドレイクとは、いわゆるドラゴンのことだ。
 この異世界の国では、神につながる聖獣とみなされている。
 かつては、オークやゴブリン・リザードマン、エルフや妖精などなど。
 そんな実在していたものの頂点に君臨していた存在だ。

 そう言うと、今は居ないように聞こえるだろうが……

「蒸気機関の火は落とすなよ!」

「分かっております!」

 発動車を湖に向かって並ばせていた団長から、心強い返事が来る。
 100人余り居る工兵や砲手たちの動きにも無駄がない。
 任せておいて大丈夫だろう。

 ……と、こんなに他人を信頼したのはいつ以来だろうか。

 転移する直前は、たしか会社で重要な何かをしていた(筈だ)。
 もう記憶もあやふやだが。
 気が付くと、俺はブカブカのスーツを着て見慣れない街中にいたのだ。

 街といっても、21世紀の日本のそれではなく、中世期の欧州のそれだ。
 レンガ造りの建物に石畳。
 道を行く人々の服も、昔の絵画にあるような古臭いものだ。

 すぐに、異世界に飛ばされたのだと気づいた。
 しかも体は15歳くらい(剥けてなかった)に若返って。

 グズグズしていてもいい事は無い。
 そこで先ず、出来るだけ大きな鍛冶屋を訪ねた。
 言葉はやたら古めかしい感じの英語に似ていたが、何故か流暢に話せた。

 俺は、そこで何を作っているのかを訊いた。
 そこに居た職人たちは、いきなり現れた見慣れないスーツ姿の少年に対し。
 戸惑いながらも教えてくれた。
 やはりというか案の定、木炭中心で石炭やコークスは使っていなかった。

 工業というのは、つまるところ熱なのだ。
 高温を使えば、より新しいものが出来る。
 その熱を作るために、石炭からコークスやタールを作ってみせた。
 もちろん、コークスを使う新しい炉で鋼や合金を生み出してみせた。
 当然に職人たちは驚いて、俺を鍛冶の神様と称えたのだ。

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