体験談 (Page 2)
それでね、はははっ。
もしも思い浮かべた家の中に人がいたら、その人が自分の理想の相手っていうんですよ。
私、その空想の相手と浮気したんです。
え? どんな浮気って……、まあね。色々。
あ、いやいや。これが私の変な体験ってわけじゃなくて、続きがあるんです。
二人目が小学校に上がったぐらいで、またパート始めたんです。
今度は二駅先にあった喫茶店。知り合いがやってて、人手が足りないからよかったらって言ってくれて。
その頃には育児にも慣れて、旦那とも色々と話せるようになってたんで、空想の浮気相手のことなんて、すっかり忘れてたんですよね。
そうしたら、その浮気相手が喫茶店に来ちゃって。
実際に浮気をしてたら、そりゃあ大変だったんでしょうけどね。まあ、私の場合は空想の相手だったんで……。
驚きました。現実にいたんだって。
相手は何でもない顔してましたけど、私は内心ドキドキして気付かれたらどうしようって、現実で浮気した訳でもないのにハラハラしてましたよ、ふふ。
これだけです。これだけのことなんですけどね、妙なこともあるもんだなって人生は。
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男性・38歳(当時)・会社員
仮に体験者の名前をAさんとする。
Aさんは高校を卒業後に大学へは進学せず、地元の小さな会社に就職した。
その会社に特に将来性があったとか、希望する職種だったという訳でもなく、Aさんは大学受験が面倒だったという理由で就職の道へ進んだという。
実際、大学に行ってなにか学びたいという気概もなかったから、働いて金を稼ぐ方がよっぽど性に合っていたのだと、Aさんは笑いながら語っていた。
そんなAさんは実家から通うこともできたのだが、会社の近くにある古いアパートを借りた。
古くはあったが、毎日大家さんが掃き掃除をしたり、住人と仲良く話をしたりととこか小奇麗でさっぱりした印象だったらしい。
そんなアパートだったから、Aさんも会社がそれなりに大きくなって、支店ができて異動になるまで居心地よく生活していた。
しかし、Aさんはそのアパートで暮らしていて、一時だけ引っ越しを考えたことがあったという。
それは社会人としての生活にもすっかり慣れた頃のことだった。
まだ、色々と緩い時代だったから未成年ではあったが、Aさんは酒屋で酒を買い、休日の朝から呑んでいたのだ。正午を過ぎたあたりで、ふっと眠気が強くなりAさんは万年床へ潜り込む。
そこで酒の席で聞いた与太話を思い出したのだという。
与太話、というのは、自分の家を思い浮かべ、玄関から入って全ての部屋の窓を開け放つ。そして順番に窓を閉める。その途中で家の中に誰かいたら、そいつは幽霊なのだと。
微睡みの縁で思い起こした与太話は、理性の手を慣れてAさんの空想を育む。
するすると空想は芽吹いて、Aさんの脳裏にアパートの一室を描き出す。
Aさんは玄関に立っている。そして、窓をひとつ、ふたつと開けていく。
濡れました。
不思議だよみごたえもありましたが
同時に同じ立場の女性として共感もできるし
なによりリアルな性交のシーンが男性目線でしか画かれていないところもとても気に入りました。
なお さん 2023年6月26日