悪徳詐欺師 VS 激重フラれ女! ~ヤるのはどっちだ~ (Page 2)
「――ご注文の品でございます」
よく分からない葉っぱが散らされた生パスタが目の前に置かれた。驚いたエミがとっさに店員に戻そうとすると、あゆ子は優しく微笑んで言った。
「エミ、水しか飲んでないでしょ。今日はウチの奢りだから、気にしないで」
「あゆ子……。ごめん、ありがと……っ」
いたずらっぽく笑うあゆ子に心から感謝しつつ、エミは夢中になってパスタを食べ始めた。久々に食べる味のついたご飯はものすごく美味しくて――ちょっぴり涙の味がした。
「次はイイオトコ捕まえられるといいわね」
「え……お琴? 和風美人になれって?」
「男よ、オトコ! あんな奴のことなんか忘れて、パーッと気晴らししてきたら? ホスト行くとかさ~」
「うーん……でも、あゆ子の言う通りかも。せっかくだし行ってこようかな」
「うんうん! その調子その調子♡」
皿にこびりついたソースをスプーンでこそぎ落しながら、エミはあゆ子の提案を反芻していた。――前々から気になってたし……行ってみようかな、『エステ』。痩せて新しい彼氏見つけようっと!
ご飯に夢中になっていたエミは気がついていなかった。あゆ子が言ったのは『エステ』ではなく『ホスト』だと。
「ごめんあゆ子……もう一皿頼んでいい?」
一週間後、エミはとあるエステ店のベッドの端に腰かけて施術を待っていた。壁一面にはうさん臭い宗教画が飾られており、部屋中にエスニックな匂いのお香が焚かれていた。エミはバスローブの裾を握りしめながら、今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
「お待たせしました。それでは施術を始めましょうか」
それもそのはず。ついたてからひょっこりと顔を出したのは、ずんぐりむっくりとした背の低い男だった――。もっと正確に言うと、つるりと光る頭頂部にもじゃもじゃの腕毛、引きつった笑みには唾が糸を引いている――小汚いおじさんだ。
「あ、あの……女性の方はいらっしゃらないんでしょうか……」
「当店は完全予約制ですからね、今の時間帯はお客様一人だけですよ」
「そういう意味ではなく……」
話が噛み合わない事にエミはイライラしていた。お香の独特な匂いも合わないし、なんだか身体がカッカと火照ってきた気もする……。
「人件費を抑えて施術料を低くしているのです。女性客のリピーターも大勢おります」
「それは……まぁ、確かに財布に優しいお値段でしたけど」
「気に入らないのであれば、他の店舗をご紹介いたしましょうか? 当店より料金が高くなりますが」
施術者の小さな瞳に見つめられ、エミはクラリと頭が揺れた。――元恋人に貢ぐこと5年。生命保険さえも切り崩したエミの財布には1000円札と239円しか入っていなかった。町中を歩き回って1000円以内で収まる店舗を探したがどこにもない。途方に暮れたエミが最後に見つけたのは、『全身施術、初回は500円!ナカから綺麗にするエステ』と文字が書かれた看板だった。
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