悪徳詐欺師 VS 激重フラれ女! ~ヤるのはどっちだ~ (Page 7)
「――でね、実は……新しい人が出来たの!」
届いたばかりのコーヒーに口をつけ、花村エミは恥ずかしそうに微笑んだ。
「それマジ? 良かったじゃんエミ! 安心したわ~」
ショートケーキのいちごにフォークを突き刺しながら、奥村あゆ子はいたずらっぽく問いかけた。
「で、その彼ってどんな人? お仕事は? 今度はクズじゃないといいけど~」
「んもう……大丈夫だよ。今はちょっと……働いてないけど」
「働いてないの!? もしかしてヒモ……? やばくない?」
いちごを頬張り、あゆ子は顔を曇らせた。エミのやつ、また変な男に引っかかったのかな……。破産する前に止めてあげないと。
「ああ、違う違う! 今ね、ちょっと刑務所にいて……」
「刑務所!?」
「私が自首を勧めてあげたの。子どもも生まれるのに、いつ捕まるか分かんないのって嫌でしょ?」
「は!? 自首!? なに!?」
エミは愛おしそうにお腹を撫でると、つい昨日――例のエステを受けてから約2週間後の――出来事を思い返していた。
「今西さん、あ、堅さんったらね、すっごくシャイで……。中々プロポーズしてくれないから、私からしちゃったんだぁ♡」
「待って待って……理解が追いついてないわ、詳しく説明してよ」
「え? だから――エステで初エッチした後に音信不通になったから死ぬ気で探し当てて、そしたら堅さんったら『自分は詐欺師だ!』なんて言うから自首させたの。最初は嫌がってたけど、本気で話し合ったら伝わったみたい♡ それから毎日刑務所に面会に行って、婚姻届け渡しまくったの。見張りの警官さんも優しくてね、途中から応援してくれたんだ~」
唐突に始まったマシンガントークにあゆ子は唖然としていた。あゆ子の様子に全く気がつかないエミは嬉しそうに薬指の指輪を見せた。中央のダイヤモンドがキラリと光った。
「それでね……これ! 花村エミは昨日、今西エミになりました♡ あゆ子には真っ先に報告したかったんだ。彼が出所したらすぐに式挙げるから、絶対来てね♡」
「あー、うん……オッケー♡ 友人スピーチなら任せてよ!」
聞きたい事、言いたい事は山ほどあったが、あゆ子は目の前のショートケーキに集中する事にした。飛んで火にいるのは虫だけでよい――マジで何一つ理解できないけど、なんか幸せそうだしいっか! 幸せにね、エミ♡
(了)
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