行きずり (Page 2)
一歩進むごとに闇が濃くなる。
日付が変わろうかという時間帯であっても都市は明るい。だからこそ、あまりの濃密な夜の気配に甲斐田は息が詰まりそうだった。
息を詰め、路地を歩きとおせば、小さな空き地に辿り着く。
路地から脱出できた開放感でほっと息をついた甲斐田は、足元に飛び石があることに気づいた。飛び石は点々と空き地を横切り、その最奥へと続いている。
甲斐田はほんの少しばかりの逡巡の後、そろりと足を飛び石に乗せた。
ゆっくりと足元を確かめつつ歩いているうちに、目が暗闇に慣れ始める。空き地には細かな砂利が敷き詰められ、雑草の類は殆ど生えていない。代わりというべきか、四方を囲むビル壁に寄り添うように蔦草が一心に空を目指していた。
飛び石に導かれるまま空き地を歩いていくと、終点には小さな石造りの祠がある。そして祠の前には木製のベンチが一脚、祠へ向かって腰を下ろす格好でぽつねんと佇んでいた。
我知らず甲斐田は唾を飲む。
本当にあった。驚きと共に微かな恐怖が胸中に滲む。
意識して呼吸し、ベンチの前を回り込む。砂利を踏む足音が妙に大きく聞こえた。
ぎし、と甲斐田の尻の下でベンチが軋んだ。暗がりで子細に見えなかったが、座った感触や先程の軋みからして、相応に古い代物のようだった。
この場所にはいくつかの決まり事がある。
ハンドライトはもちろん、スマホなどの周囲を明るくするものの使用は厳禁ということだ。鼻を摘ままれても分からないほどの暗闇ではないが、人工の光から遠ざけられたプレッシャーはかなりのものだ。
ベンチに腰掛け、石造りの祠と向き合ったまま甲斐田は、じっと息を潜める。
そのまま座り続けて時間の間隔が溶けてしまった頃、ふと、背後に気配があることに甲斐田は気づいた。
振り返りたい衝動を甲斐田は堪える。
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