堅物教師と片思い
高校教師の福田千夏は、2年目を迎えようとしているある日、放課後の教室で男子生徒に告白されていた。そこへ注意しに入ってきたのは安藤隆。千夏の教員の先輩でもあり、昔から恋してきた憧れの男だった。2人がまだ教師と女生徒だった頃から千夏は隆に2度も告白していたが、その時は隆にふられていた。しかし、教員同士となった今、千夏は最後の気持ちで隆にまた告白をしようとした…
「福田先生、僕、先生のことが好きなんです!」
夕陽の差し込む放課後の教室で男子生徒の情熱的な愛の告白を受けるのは、新任から2年目を迎えようとする福田千夏だった。
「田中くん…嬉しいけど、私たちは」
「本気なんです!」
ぐっと距離を詰めてきた田中という生徒が、勢いで千夏の手を握ったその瞬間
「何やってるんだ!」
大きな音を立てて教室前方のドアを開け、安藤隆が入り口から怒鳴りつけた。
ずかずかと教室に入り、鋭い眼光で生徒を睨みつける。
「あ…安藤先生」
青ざめた生徒が咄嗟に千夏の手を離し、2、3歩後ずさったのを確認して、千夏は小声で生徒に言った。
「安藤先生には私がうまく言っておくから、今日はもう帰りなさい」
「先生…」
生徒は、悲しげな目で千夏を見つめ、しかしすぐに俯いた。
そして自席に置いていた鞄を取って、足早に教室後方のドアから出て行った。
バタバタと逃げるように走る生徒の足音が消えると、苦々しい顔で隆は千夏に言った。
「福田先生、ああいったことは困ります」
「…」
はぁ、とため息をついて隆は千夏に背を向けた。
「困ります?」
後ろから千夏は声をかけた。
振り返った隆は、苦い表情を崩さない。
「困るだけですか?その割には大きな声で怒鳴り込んできましたね、普段は冷静な安藤先生が」
「…馬鹿なことを」
吐き捨てるように隆は言った。
しかし内心では、激しく動揺している。
「覚えてますか?安藤先生。私が安藤先生に初めて告白したのも、この教室でした」
「…」
覚えているに決まってる。
隆はそう口にしてしまえるならと思った。
「あの時も、安藤先生は困るって仰いましたけど…あの時も、今も、本当に困っているだけですか?」
「…言った以上の意味はない、当たり前でしょう」
「私はもう、子どもじゃないです」
「そんなことはわかっています」
「本当に?」
隆に近寄って、千夏は隆の顔を見上げた。
視線を外した隆を、それでも千夏は見つめる。
「今私が3回目の告白をしたら、どうしますか?」
「…」
「今なら私と安藤先生はただの同僚です。やっとここまできた。でもやっぱりそれでも、私は先生の眼中にないのかな」
「…」
「3回目の告白は、先生にしてほしかったな…なんて」
隆ははっとした顔をして千夏の顔に視線を戻した。
千夏は、あの頃と同じように目に涙を浮かべている。
「…ごめんなさい、もう困らせません」
一礼した千夏が隆の横を通って、教室を出ようとする。
隆は思わず、千夏の背中に向かって声をかけた。
「福田!」
千夏の手を咄嗟に掴んで引き寄せた隆は、そのまま千夏の身体を抱きしめた。
「…先生」
「ごめん…福田、ごめん」
千夏は信じられない気持ちと、ようやくこの時がきたのだという喜びで、小さく身体を震わせながらそっと自分も隆の背に腕を回した。
ずっとずっと、焦がれ続けた背中だった。
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めちゃくちゃ最高です!
行為が上手い理由からのオチに悶えた。堅物キャラまた書いてください
もち さん 2023年4月24日