憧れの後輩は痴女? (Page 3)
「真奈、好きだよ」
彼女の顔を正面から見つめると、思わずそんな言葉が漏れた。
この言葉は墓場まで持って行くつもりだったのに、バレたことで気が緩んだのかもしれない。
真奈の顔がふにゃりとなった。
でも次の瞬間には不敵な笑みに戻る。
「んふふ。もう、お酒のせいにできないッスねえ」
彼女はまたスマホを俺に見せつけてきた。
そこには、真剣な表情で彼女に告白している俺が映っている。
「一条、何が目的―――」
「真奈」
「ま、真奈、お前、何がしたいんだ?」
「んふふ。まずは仕事を終わらせましょうよ、康太さん。とりあえず、美味しいご飯が食べたいッス」
*****
真奈のことが気になり始めたのは、客からのクレームに手こずる彼女の手助けをした時からだ。
その対処が終わった時に、彼女は『先輩、すごいですね』とキラキラした瞳で俺を見上げてきた。
馬鹿な俺はその笑顔が忘れられず、何かにつけて彼女をフォローするようになった。
その結果彼女は俺の部下になり、より身近な親しい存在になった。
しかし今、彼女は俺のご主人様を気取っている。
「ここ、いっぺん泊まりたかったんスよねえ」
「1人で泊まればいいだろう?」
「ツレナイなあ。大好きな真奈ちゃんとホテルで一晩過ごせるんスよ? ほんとは嬉しくて堪らないんスよね?」
会社のすぐそばのシティホテルの一室に、真奈の満足気な声が響く。
俺は何も言わずに彼女と自分の荷物を置き、ベッドに飛び込んで無邪気に跳ねる真奈の傍らに立つ。
「ははっ! 大きいベッドはいいなあ」
「一条、で、このあとは?」
「うちのベッドは狭いもんなあ。ははは」
「一条?」
「夜景も綺麗だし。最高かよ!」
彼女は俺の声を無視するように、大きな窓のそばに立ち、ガラスに手をついて都心のビル群を眺めていた。
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