あの日に帰れるのなら (Page 7)
「……そろそろ、出そう、かも……」
手の動きはそのままで、つばめは肉棒を口から出した。その瞬間、弾けるように俺は吐精した。
つばめとお互いの身体を貪りあったのは、それが最初で最後だった。
正式に部活を引退した頃、つばめと進路の話になった。就活はしていないようだし、きっと地元の大学か専門学校に行くのだろうと思っていた。
『東京の大学受けるの。どうしても行きたい学科があって』
頭が真っ白になった。大学生になったら、もっとふたりで過ごす時間も増えて、今よりも長く一緒にいられるのだと信じていた。
思えば、初めて会った日も、その翌日も、つばめは帰宅部にしては遅い時間に学校に残っていた。きっと図書室か教室で自習をしていたのだろう。
俺は大学に入ってすぐに、サークルの先輩にみんなで宅飲みするからおいでよと誘われた。先輩の部屋を訪れると、そこにいたのは先輩ひとりだった。
その日俺は、流されるままに童貞を捨てた。好奇心と性欲に負けてしまった。あんなに大好きだったつばめではなく、知り合ったばかりのどうでもいい女と済ませた初めてのセックスは、拍子抜けするほど呆気なく終わった。つばめとあの日互いの身体を探り合ったときのような熱情や昂揚感はなかった。酒臭い唇を重ね、先輩に手を取られ、先輩の股間に持っていかれた。伸びっぱなしの毛の感触や、分泌液の滑りに不快感さえ覚えて、先輩の興奮が高まるのに反比例して俺の気力は失われていった。なんとかゴム越しに先輩の中で達することはできたが、それが不思議なくらい俺は萎え切っていた。固くまぶたを閉ざして、必死につばめの淫らな姿を思い浮かべながら腰を振った。
つばめへの罪悪感が募り、彼女からメールが来ても上手く返信することができなくなってしまった。ゴールデンウィーク、会える?というつばめからのメールには、サークルの合宿があるから無理だと返事を送った。つばめと会いたかったけれど、会わせる顔がなかった。じゃあゴールデンウィーク、帰省するのやめるね、と返信がきて、それからつばめからの連絡は二日に一回、一週間に一回、と日に日に減っていった。そしていつの間にか、彼女からメールが来ることはなくなった。別れの言葉すらなく、俺たちは終わった。
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