青い薔薇の花言葉は (Page 3)

「つまらない話でしたね」

「いや、有意義だった。おかげで『ブルー・ローズ』が連中にやけに拘る理由も分かったしな」

 すっと視線を鈴鹿へと澤木は向けた。

「こういう情報の積み重ねが後で効いてくることもある。覚えとけ」

 小さく鈴鹿が頷く。

 それを見ていたアトリはきょとんとしている。

「アトリさん。私とあなたの境遇は同じようなものです。ですが、私は自分の能力をコントロールできている。それはあなたにも可能だという立派な証明にはなりませんか?」

 急に話の矛先を向けられたアトリは難しい顔をしてしまった。その様子を見た古賀は苦笑する。

「澤木さんのように上手くは教えられませんね」

「俺のは教えるなんて上等なもんじゃないさ。叩き込んでる。相手の気持ちなんてお構いなしにね」

 澤木の口の端が自嘲で歪む。その動きを抑えることができず、彼は誤魔化すようにカップに口をつけた。

 白湯を一口飲み、再び彼は口を開く。

「さて、そろそろ冷えてきた。旦那とお嬢ちゃんは、車に戻ったほうが良い。今夜は二人だから大分快適なはずだ」

 吹き付けた風は冷房とは違い、湿気を含んだものだった。山の中を吹き降ろしてきた冷たい風は、焚火から火の粉を立ち上がらせ、火炎を大きく揺らす。

「俺は焚火が消えるまでもう少し待つ」

 焚火を囲む四人から少し離れた位置に大型のバンが停められている。隣接させなかったのは、テントが襲われても良いようにだ。車自体は少々手を加えているため、銃撃程度であればしばらく持ち堪える。

 仮にテントが襲われても車を使って逃亡すればいい。

 万が一の場合に備え、澤木は古賀にはそう言い含めてあった。

 古賀がアトリを連れて車に乗り込み、しっかりとロックしたことを確認し、澤木は再び焚火に目をやる。

 そして、焚火を挟んで座っている鈴鹿に話しかけた。

「鈴鹿」

 名前を呼ぶと、二人だけの時に見せる鋭利な面差しを彼女は澤木に向けた。

 その表情に満足し、彼は溜息を吐く。それから逃避行を始めてからずっと胸の裡に燻っていた考えを言葉にした。

「今回の仕事が終わったら、独り立ちしろ」

「えっ?}

「お前に教えてやれることは、俺にはもうない。金なら今回の報酬を半分ずつに分けても十分やっていける」

「なんでっ、先生っ、どうして……?」

「でけぇ声出すな。旦那達が起きちまう」

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