バスの中の秘め事
徳永由佳と杉本明は、大学生同士のカップルである。共通の推しアーティストのライブに一緒に行った帰り、2人は夜を走る高速バスの車内でうとうとしていた。しかしとあることをきっかけに2人とも性的に興奮し始めた。手を繋いでいるとどんどん興奮が高まってきた明は由佳にアプローチをかける。バスの車内ということもあって困った顔をする由佳だったが、実は由佳の方も悶々としていて…
「あぁんっ」
夜を走るその高速バスの車内に一瞬、女の喘ぎ声のような音が響いた。
うつらうつらしていた徳永由佳は驚いて顔をあげると、隣に座っている杉本明の方を見た。
明もまた驚いた表情で由佳の方を見ていた。
2人が座っている席より後方からその音は聞こえた。
しかしその妙な音が聞こえたのは一瞬だけで、後はバスの中に静寂が戻っていた。
「AVかな」
くすくす笑いながら、明は小声で由佳に話しかけた。
「こんなとこで見る?信じらんない」
眉を顰めて由佳も小声で答えた。
どうやら後方に座っている乗客が、端末とイヤホンが繋がっていないことに気づかず動画を再生してしまったようだ。
よくあることだが、それがアダルトコンテンツであれば当人の恥ずかしさは大きいものだろう。
*****
明と由佳は高校時代から交際している若いカップルだ。
2人とも同じ大学に通っている。
今日は、2人の共通の趣味である推しのアーティストのライブを一緒に見に行っていた。
帰りの高速バスでライブの感想もひとしきり語り合い、疲れて眠りかけていたところだったが、さっきの声で2人はすっかり「目が覚めて」しまった。
ライブの興奮の余韻が残る身体が疼き始めているのを由佳は感じ、「こんなことなら、泊まれば良かった」と少しだけ思った。
ライブが終わるのが夜で、2人の住む場所まで帰るとなると夜遅くになることはわかっていた。
しかしライブ会場近くで宿泊するより、県境を2つ跨いだ場所にある家まで高速バスでその日のうちに帰る方が圧倒的に安上がりだ。
2人は学生で、バイトはしているもののお金が溢れている訳ではない。
削れる部分は削りたいということで意見が一致し、今回は高速バスで帰ることにした。
しかし由佳は思う。
ライブで熱くなった身体を、明とすぐに重ね合えたらそれは気持ちよかっただろうなと。
「ねえ、覚えてる?」
明がふと、由佳の耳元で囁いた。
由佳は、自分のよこしまな気持ちが明に知られてしまうのではと、少し身体を硬くした。
明は、由佳のこわばった様子を意に介さず、するっと由佳の手を握ってきた。
「?」
驚いた顔で、由佳が明を見ると、明はいたずらっぽく笑った。
あまあま!
こんなドキドキもステキ(><)*。
イエロ。 さん 2023年1月22日