愛液はオシッコにまみれて -Born to be Wild!- (Page 4)
クルマごとオンナも釣り上げた
「ありがとうございます」
怒られていたオトコはバツの悪そうな顔そして、順平の水をポリタンクごともらっていった。
「ポリタンだけは、返してくれよな、色男クン(笑)」
こうして、要領の悪いBBQグループとの絡みは終わった。
そろそろ陽が暮れそうになったので、順平はツールを畳んでV6パジェロの後部スペースに手際よく荷物を積んでいった。
そこに、件の色男クンと頼子がポリタンクを返しにきて、「助かりました」と、お辞儀をしていた。色男クンは30歳くらい。アウトドアとは縁のなさそうな雰囲気で、クルマにも興味がない世代の典型といった感じだ。
その色男クンが去り際に「ひとりで山に来て、何か面白い事でもあるんですかぁ? 水をもらって、こんな事を言うのもナンですけど、変わってますよね?」と、悪びれずに聞いてきた。
その言葉を聞いた頼子は、焦って顔色を変えて「何を言ってるんですか、主任。美奈子さんたちが待っていますから、早く戻りましょ」と言って、無理矢理に主任を引っ張っていった。
「変な事言ってゴメンナサイ。きょうは、ありがとうございました!」。
どうやら直属の上司はふざけたヤツでも、部下はしっかりとしているようだった。順平は、取り敢えずは山道に出てから日帰り温泉にでも入って、くつろいだ気分で帰ろうとして、BBQグループの横を通り過ぎようとした。
「こんなヤツらが出入りしたら、釣り人も怒るし来なくなるかもな」と思っていたら、
「ちょっと待ってください!」。
通せんぼをするようなジェスチャーで、クルマの前に頼子が飛び込んで来たのである。
「危ないじゃないかっ! いくら頼子ちゃんでも、怒るよ!」。
どうやら、グループの乗ってきたワゴンがスタックしてしまったようだ。これでは、山道へ出るどころか、河原にクルマを置き去りにしないといけない。
「で、オレにどうしろっていうの?」
「すいません。慣れてそうなので、クルマを出してもらえないかと思って…」
見れば、砂利にハマってタイヤが喰い込み、空回りしてしまっていた。無理にエンジン回転を挙げるとオーバーヒートするし、ますます砂の部分にタイヤが埋め込まれてどうにもならない状態で立ち往生している。
「アナタたちねぇ、アウトドアを舐め過ぎなんじゃないの?」
順平はあきれながらも、パジェロに積んである古毛布を出してハマっている左後輪の下に敷いた。それから、念のため付けている電動ウインチをワゴンのバンパーと繋いで、まずはオフ状態でロープとして引っ張ってみる事にした。
「おい主任、オレが引っ張るからハンドルをゆっくりと回していけ。ゆっくりとだぞ」
「はい」
順平はバックのまま(ウインチがフロントにあるため)ワゴンを引っ張っていき、ジリジリとワゴンの位置を変えていったのだった。
それだけでは、完全に向きを変えられないので、最後はウインチをオンにして巻き上げて脱出向きを変えたのである。
そうして、やっとの事で砂利・小石の山からは脱出した。
「そのまま、降りてきた急坂を登って山道に出ろ!そんで、真っ暗になるからスグに行け!」と、叫んでやった。
もたもたしていたら、順平が河原から山道に出られなくなるからだ。決して、親切からの言葉ではなかったのである。
そうやって、「なんちゃってアウトドア隊」は、順平の前から消えてくれたのだった。
「やれやれ」と、つぶやいた順平は念には念を入れて、強力にしてあるフォグランプで道を照らして急坂を登って行く。そして、山間部に出ると通常のライトに戻して家路についた。もう、日帰り温泉に寄るテンションはなかったからである。
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