クーデレ処女と更新料 (Page 4)

『んっ……んんっ……』

　正直言って、入り口がよく分からなかった。
　それで適当にまさぐってみたのだが、当然うまく入るわけもない。
　後輩の内側から液が出てきてて、潤滑の問題は無かったが。

『んんんっ……んあっ！？』

　それまでガマンしていただけの後輩の顔が、急にハッとしたものになる。
　と同時に、それまで壁だと思っていたところに自分の肉棒が。
　まるで吸い込まれるように奥へと入り込んでいった。

『あああっ、いた、いたあぁぁぁぁっっっ……』

　声を押し殺しながらも痛みを訴える後輩。
　その様子とは裏腹の、膣内の平和な柔らかさと温かさ。
　そのコントラストに急に罪悪感が沸き上がって来て。

『ゴ、ゴメン』

　慌てて肉棒を抜いた。
　その表面には、真っ赤な破瓜の証がベッタリと付いていて。
　ゴムを付けて再挿入なんて気には全くならなかった……

『まだお互いに名前も知らないのに』

　二人が持ってたポケットティッシュをフルに使って後始末をして。

『センパイの名前は知ってる。香住田　藻也さん』

　テーブルの上で後輩の肩を抱いて座っていた。

『でもセンパイは私のことなどすぐに忘れてしまうでしょうから』

　そして自棄気味に目を伏せて。

『だから、私の名前は名無しのゴンちゃんで』

　…………

　処女と童貞の初体験なんて所詮こんなもんで、まだマシな方だったろうさ。

　さて、気を取り直して。
　令和のゴンちゃんのアソコの中は、どんな風なのかなあと。
　期待を込めて、すっかり力の抜けた体からショーツを引き下ろしたのだが。

「あ、あれ……？」

　そこは全くのツルツルだった。
　毛も無ければビラビラもピラピラも、もちろん豆も無く。
　まるでマネキンの股間のようにまっ平で。

　しかしその代わりなのだろうか、視界の左下に事務的な一文が表示された。

『続きはデータ更新料をお支払い後にお楽しみいただけます』

　………………

　…………

　大げさな作りのヘッドギアを外す。
　するとそこは、秋雲に呼ばれて入った会議室だった。
　俺は椅子に座っていて、周囲には電気スタンドのような機器が数台。
　総務部の部長は最初から居なかった。

「どうだった？」

　俺の前に立ち、評価を聞こうとしてる秋雲に向かって。

「よく出来てる。途中でシミュレータであることを忘れたほどだ」

　ヘッドギアは重いが、ソフト担当のオマエの所為じゃないなと付け加えて。

　この会社で開発された新たなAI搭載のゲームマシン用のヘッドギア。
　匂いの再現をも可能にした最新機だ。
　そして、デモ部分のソフトは秋雲のオリジナルである。
　（つまり、部長や政府がどうのこうのとかは全部秋雲の作り話だ）

「でもオマエ、嫁さんからキャラのデータを取ったんだろ。大丈夫なのか？」

「あ、ああそうだが。よく分かったな」

　自分の嫁が他人（しかもよく知ってる相手）に抱かれてるところを見ると。
　なにかこうもの凄く興奮するらしい。
　嫁も同様だから、データ入力も非常に協力的だったのだと。
　……つうか秋雲、オマエら夫婦は結婚半年でもうその境地かよ。

　そんな仕事熱心な秋雲は、俺の指摘を驚異の洞察力と見たようで。

「このソフトに関して香住田の率直な意見を聞きたい。頼む教えてくれ！」

　まあそこまで言われては、同じ設計士として逃げてはいられない。
　しかし、親友の家庭を不和に追い込むようなことも言えるものではない。
　だから、出来るだけそれと悟られないように。
　遠回しの上に更に遠回しにして、その上慎重に言葉を選んでこう言った。

「太もものホクロは右側じゃなくて左側だろ」

（了）