ハロウィンは恋の季節

・作

「トリック・オア・トリート!」の声と共に、俺の家にやってきたのは鐘山涼香(かねやますずか)。幼なじみで顔見知りだが、俺が進学、就職とステップアップするにつれて、少しずつ疎遠になっていた。しかし、いきなり仮装してやってきた涼香は妙に積極的で、俺はついつい襲ってしまうのだった。甘さを通り越して、濃厚なセックスハロウィンナイトの始まりだった。

「トリック・オア・トリート!」

 超棒読みでうちの家をノックしてきたのは、近所のいかにもギャルっぽい女子校生だった。
 確か鐘山涼香という名前だったはずだ。
 
 しかしどことなくいつもとは印象が違って見える。
 ああ、と俺は遅まきながら気がついた。
 
 トレードマークの明るい髪を隠している魔法使いの帽子の存在に。
 いつもの制服の上にも、魔法使いのマントが羽織られている。
 ああ、今日はハロウィンだったか、そう思っていると涼香がじれったそうに口を開いた。

「で、お菓子はないの? あるでしょ、どうせお菓子ボリボリ食べてるの知ってるんだから」
「そりゃあ、あることはあるけどさ……」
「じゃあ、上がるわよ」

 止める間もなかった。
 涼香は俺を押しのけて、ずかずかと部屋へと上がってしまった。
 横を通り抜けていく際、女の子特有の良い匂いが俺の鼻をくすぐっていくのだった。
 
「はー、もう少し片付けたらどう?」

 涼香は洗濯物を放り投げてあったソファにどっかりと座ると口を尖らせた。

「別に来客は考えてなかったから良いんだよ」

 俺はそう言うと、涼香が座る際に投げ捨てた洗濯物を部屋の隅に寄せる。

(っていうーか、なんでこいつ、普通にいるんだ……)

 俺はちょっと不思議な気分になる。
 確かに涼香は近所に住んでいて、小さい時からよく知っている。
 しかし、こうやって家にいれるほど仲が良いわけではない。
 ソファの上で生足をさらしてる涼香を見ながら違和感しかなかった。

「で、いつお菓子出してくれんの? っていってもイタズラなんてしないけどね」
「お菓子も出さねーし、何もされるつもりもねーよ。っていうか、何我が物顔で居座ってるんだよ」
「別に良いじゃん。あんたと涼香の仲でしょ」

 ちょっと強めの俺の言葉にも涼香はどこ吹く風だった。
 それどころか、挑発的な笑いを浮かべている。

「んー、何よ、照れてんの? あ、もしかしてお兄さん、その年でドーテイなん?」
「はっ? いきなり何言ってんの、お前」
「いやいや、分かってるから、いいよ。この涼香が卒業手伝ってあげようか?」
「ホント何言ってんですかね……」

 ニヤニヤと嫌な笑い顔を浮かべている涼香。
 ちょっとイライラしてきた俺は、涼香の泣き所を攻めることにした。

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