一線を越えたい姪と身体を許してしまった叔父の話

・作

早世した兄に代わり、姪である優美を男手一つで育ててきた田中誠司。彼はある日、優美から抱いてほしいと言われるがそれを断る。後日、家出した優美を警察から引き取ってからの帰宅後。優美に誘われるがままに、寝室に連れ込まれ、誠司は優美と身体を重ねてしまう……

「本当に申し訳ありませんでした、はい……よく言って聞かせますので……」

田中誠司は、警察にペコペコと頭を下げて、車に戻った。
先に車に乗っていた姪の田中優美は、暗闇の中でスマホを操作している。
誠司が車に乗り、一瞬目配せをしたものの、優美の視線はスマホへとすぐに戻った。

「……帰ろう」

そうして街灯が過ぎ去るのを横目に、誠司は家へと車を走らせた。

優美は、誠司の兄の娘だ。
兄もその妻も、ほぼ同時期に病気でこの世を去った。
幼い優美を引き取った独身の誠司は、男手一つで優美を大学生まで育て上げた。
性別の違うなりに、よくここまで育てたと誠司は自分で自分をよく褒めていた。
気を遣い、親として、叔父として、長い時間をかけて築き上げた優美との関係は、良好だった。
あの日までは。

 

「どうして抱いてくれないの?」

ある時、優美に押し倒された夜があった。
親族であること、年齢の違いがあることを理由に、誠司は優美を押し戻したのだ。
その時の優美の表情は、忘れたくても忘れられないだろう。

「どうしてって言われても……優美ちゃん、僕は君の叔父だ。君のお父さんの弟だ。だからこういうことは……」
「だからなに?私の好きな人はずっと叔父さんだけだったよ。高校生のうちからはさすがにまずいかなと思って、大学生まで我慢してきたのに……抱いてよ。ねえ、好きな人に抱かれたいのは当たり前でしょ?」

それでもいけない、世間が許さないと誠司は断った。
それから何度も優美から迫られる日が続いたが、数か月経った今日、優美が夜遅くになっても帰ってこなかった。
抱いてくれないなら出ていく、と書き置きを残して。

方々に連絡を取ったが、最終的に優美は駅前を歩いているところを警察に保護された。
それを迎えに来て、今に至る。

「……叔父さん」
「なんだい?」

いつの間にかスマホを鞄に戻し、窓の外を見ている優美が言う。

「……迷惑かけて、ごめんなさい」

そう言った優美の顔は窓を向いているが、視線だけは誠司を向いていた。
視線を交わせ、誠司は少しだけ間を置いて返事をする。

「いいんだよ。優美ちゃんが無事でよかった」
「……心配、した?」
「そりゃあ勿論、したとも。大きな怪我もなくてよかった」
「……わかんないよ?」

赤信号で止まり、誠司はちらりと優美を見る。
優美はブラウスをはだけさせ、胸元を誠司が見えるようにしていた。

「優美、ちゃ……」
「おうちに帰ったら、確認してほしいな」

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