各駅停車に揺れる少女

・作

「今日はバイトも無いし、家で昼寝でもするか…」

 そうため息をつきながら、俺はターミナル駅で発車を待つ各駅停車のシートに腰をおろした。

 俺は郊外の実家から、電車で都内の某私立大学に通う、どこにでもいるような内気で平凡な大学3年生。新学年の始まったばかりの4月初旬、まだ開講していない講義も多く、今日の授業は午前中で終わってしまったのだ。しかも、バイトが入ってないとなると、取り留めて趣味もない俺は、時間をもて余してしまう。学食で軽い昼食をとった後、早々に家路に就こうと、ターミナル駅で電車に乗ったのである。

ラッシュアワーはぎゅうぎゅう詰めで身動きをとるのも困難な電車なのだが、平日昼下がりの下りの各駅停車ということで、俺の乗っている車両の乗客は、俺を含めても4~5人といったところか。

間もなく発車時刻となったとき、1人の女子校生が俺の車両に乗り込んできた。

小柄な身体に小さな丸顔、小動物のようなクルリとした瞳、サラサラのショートカットに前髪パッツンの、なかなか可愛らしい女の子である。紺色の制服から伸びる、張りのある長い脚が美しい。

彼女は出口で立ち止まり、少し車内を見渡すと、ゆっくりと歩き始めた。

俺はふうっと息を吐き、軽くまぶたを閉じながらイヤホンから流れる音楽に耳を傾けることにした。

と、そのとき、俺の肩に柔らかく温かいものが触れる感覚があったと同時に、ぐっとシートが沈み込んだ。

俺はゆっくりと目を開けると、隣に身体を密着させて、彼女が座っていた。

目だけを動かして周囲を見渡すが、電車は相変わらずガラガラだ。

「トナラーか…」

 俺は心の中で呟いた。しかし、可愛い女子校生が隣に座っていて、悪い気分がする訳がない。

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