革命戦士の愛欲の日々 (Page 3)

「違う!違う!違うんだ!革命とは、芸術とはこんなものじゃないんだ!!」
 僕は顔を真っ赤にして叫び、さらに髪をぐしゃぐしゃにかきむしった。
「革命とはこんな生易しいものじゃないんだ!こんなまどろっこしいものじゃないんだ!今の行為はこう、何て言うか、薄くて分厚い邪魔者が介在してるんだ!!」
 一同困り顔である。そんなみんなをよそ目に、僕は自分の頬を叩きながら、さらに叫んだ。
「何なんだ、この違和感は!邪魔物の正体は!崇高な革命を邪魔するものはっ!!」
 そう言うと、僕はムッとして黙り込んだ。

※※※※※

 沈黙の時間は、10分ほど流れただろうか?僕はふと閃いた。
「そうだ!コンドームだ!コンドームが魂と魂のぶつかり合いを邪魔してるんだ!コンドームは政府だ!コンドームは資本家だ!コンドームは権力だ!我々プロレタリアートは、階級闘争を通じてコンドームから解放されなければならないのだ!コンドームは、革命戦士の連帯を妨げる障壁だ!38度線だ!愛と平和を引き裂くベルリンの壁だ!我々革命に賛同した同志は、コンドームを打ち破って連帯しなければならないのだ!あっ!そうだ!生だ!生セックスだ!革命という崇高な使命を遂行するために、我々は生セックスをしなければならないのだ!生セックスこそが、革命を芸術にまで高めた、最高に美しい芸術なのだ!我々革命的映画人は、見る者に生セックスという最高の革命美を示さねばならないのだ!!」
 我ながらど阿呆である。もちろん他の撮影スタッフたちは、口をあんぐりとさせ、お前正気か?という目で僕を見ていた。しかし、1人だけそうではない者がいた。
「直樹!その通りだわ!!」
 咲子である。別に咲子は変態性欲の持ち主とかではないが、きっと撮影中何回にも渡る本番行為の中で、頭が沸いたのであろう。
「直樹!私、感動したわ!!そうよ!コンドームは愛と平和を妨げる、公安の申し子よ!権力による統制よ!私たちに対する弾圧よ!こんなものがあるから、この世から戦争が無くならないのよ!!」
 むちゃくちゃもいいところである。撮影スタッフ一同、やれやれという感じでお互いに顔を見合わせていたが、そんな中で僕は感涙を流していた。
「おお!咲子!分かってくれたか!みんなに見せようじゃないか!僕らの生セックスという革命を!!」
 僕と咲子が感動のあまり抱き合いながらおいおいと泣く中、他のみんなは頭を抱えてため息をついていた。
「そうと決まれば撮影に入るぞ!総員、位置につけ!!」
「それじゃあ、シーン11!よーい!アクション!!」

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