婚約者はひどい人 (Page 4)

「…ねぇ、俺の事好き?」

指先で舌を弄りながら、甘い声が耳元で問い掛けます。

…どうしようもない、浮気症のDV男。

そう分かっているのに、私の胸はぎゅっと苦しくなって、無意識に首を縦に振っていました。

「う、ん…っき…大しゅき…」

「…そっか」

「あぁぅっ…!」

今まで乱暴だった腰遣いが急に優しくなり、私の気持ちいいところを柔らかく刺激されます。

「…あ…!そこぉ、あぁっ…!はっ…!」

長年に渡って執拗に開発された、子宮の入り口。

そこをペニスの先でじんわり押されるだけで、何とも言えない多幸感に包まれ、きゅんきゅんと中が締まります。

「やぁ…はぅ…あぁぁあ…」

「気持ちいい?」

「…っ…んん…ダメ…わ、たし…もうっ…」

「もう?もう何?」

「もう…もうっ…、…」

もう分からない、とバスタブにしがみついて首を振ると、後ろからはクスクス笑う声が聞こえました。

「ねぇ、教えて?」

「…あ…!…あ…あ―――…!」

じゅぶっ、と強く擦られた瞬間、頭から足先までを鋭い快感が駆け抜け、その波が立て続けに込み上げてきます。

「ひぁぅ…!待、っ…今…あんっ…!」

…ぐちゅっ…ぱちゅん、ぱちゅっ…

「あぁ…やだぁ、またイっ…んんぅ…!」

…ぐりぐりぃ~…

「…あぅぅ…!…はぁ、はぁっ…あぁぁあ~…!」

数秒置きにオモチャのようにイかされながら、浴室の熱気でのぼせてきたのもあり、私の視界にはだんだんと靄がかかってきました。

両足はぷるぷると痙攣し、もう立っていられません。

鶴崎君はへたりこむ私の体を抱き起こし、背中にキスをして何か言いましたが、それが何と言ったのか、私にはもう分かりませんでした。

 

鼻の頭に柔らかいものが触れます。

ぼんやり目を開けると、隣に寝ていた鶴崎君が気だるそうに笑って、また鼻にキスをしました。

「…お腹減った」

「…ぁ…ごめん、晩御飯…すぐ作るから…」

「うん…けど、眠いし…」

もぞもぞと姿勢を変えた彼の胸元には、チェーンに通されたお揃いの指輪。

…ちゃんと付けてくれてたんだ。

私がそれを指先で触っていると、鶴崎君は目を閉じたまま「冷蔵庫」と言いました。

「?」

「…みちるの好きなプリン、入ってるから食べて…」

「…え…?…あ、ありがとう…」

「…うん…」

その言葉を最後に、薄い胸はゆっくりと上下し始め、本当に眠ってしまったようです。

…この人が分からない。

私はそう思いながら、自分も丸くなって目を閉じました。

きっと明日も明後日も、同じような日々が続いていくのでしょう。

彼が私を必要としなくなるその日まで。

(了)

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