ミステリアスな未亡人・吉崎さん

・作

佐田(さだ)は職場のパート・吉崎(よしざき)が気になっていた。一年前に夫を亡くしたという吉崎だったが、歳の差婚ということもあり、財産目当てだと言われていた。死因は交通事故。何も問題はないが、保険金が相当入ったという噂が流れるも、吉崎は仕事を辞めていない。また、吉崎の体は佐田から見ても十分な魅力があり、その肢体を見て妄想を繰り返していたのだが、ある日吉崎に声をかけられ—…。

パートの吉崎(よしざき)さんは、ミステリアスな人だった。

一年前に夫を亡くした未亡人。

確か歳が二周りも上で財産目当てなのでは、と噂されていた。

だけど、死因は交通事故で処理されている。

不審な点はないとして、保険金が下りた。

その金額もとんでもない金額だったと同僚から聞いたけれど、今も仕事を辞めていない。

相変わらずパートを続けている。

一日4時間、週に5日。

家にいるのは退屈だし、お小遣い稼ぎも兼ねて、と笑っていた。

保険金があるのでは、と誰も訊けず吉崎さんは毎日遅刻も欠勤もせずパートに勤しんでいた。

 

吉崎さんは俺より10歳年上の37歳。

女ざかりと言う言葉がピッタリなほど、熟れた色気が出ていた。

未亡人、というものの恋人の存在はわからず、あの豊満な体をもてあましてはいないか。

もしそうなら、俺を誘ってくれないか。

そんな勝手な妄想をするくらい、吉崎さんはミステリアスな未亡人だった。

「佐田(さだ)くん、少しいい?」

珍しく吉崎さんから声がかけられて、返事をする声が上ずった。

「あのね、助けて欲しいんだけど」

「あ、何か仕事で困ったことがありましたか?」

自分でよければと話を聞けば、思い切りプライベートな内容だった。

「あの、ね。甥っこの誕生日プレゼントを選びたいんだけど、よくわからなくて……丁度佐田くんと同じ歳だから何を貰ったら嬉しいか教えてほしくて」

そんなことを言いながら、髪を耳にかける仕草。

はにかむ様子に、思わず喉が鳴ってしまった。

「いや、俺も流行りに詳しくないですし、」

やんわりと断ろうとしたが、吉崎さんは「お願い」と言葉を重ねてくる。

その際、耳を触っている方の腕が胸を押している。

むに、と形を変えたはちきれんばかりの胸に俺の視線は自然とそこを凝視してしまった。

気付かれてはいけない、そう思ったが吉崎さんは小首を傾げ「ね、お願い」ともう一度言い、胸が揺れるのが見えた。

その揺れる胸に合わせるように、俺の口からは了承する言葉が出ていた。

 

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