聖姦士(セイント・レイパー)シンジ (Page 5)
第六章 凱旋、そして
凱旋して戻ってきた僕らを真っ先に出迎えたのは、『さえ』だった。
「おかえりなさい、シンジ!大変なご活躍だったそうで!」
僕は照れ臭そうに頭をかきながら、
「いやぁ、そんなことないよ」
と言った。
「シンジ…いえ、聖姦士。これを受け取ってもらえますか?」
そう言いながら、『さえ』は何かを差し出した。
「これは?…」
「聖姦士、これはあなたと姫との契りの証です」
大臣はそう言った。
「聖姦士。実は聖姦士は、己れの使命を果たしたら、間もなく元の世界に戻る運命にあるのです。歴代の聖姦士がそうでした。聖姦士シンジ、あなたが元の世界に戻る前に、姫と夫婦の契りを結んでいただきたい、それが姫の願いです」
『さえ』はコクリと頷いた。
「わたしとの契りの指輪、受け取ってもらえますか?」
僕は左手を差し出した。『さえ』は青く輝く指輪を僕の薬指にはめると、今度は僕が『さえ』の左手の薬指に、ペアになっている結婚指輪をはめた。
そして、彼女の手の甲に口づけした瞬間、僕の視界がグニャリと歪んだ。
「聖姦士!聖姦士!シンジーッ!!」
僕の頭の中はグラグラと揺れ、そして視野がどんどん暗くなり、最後はブラックアウトしてしまった…
エピローグ
夢から目覚めると、日曜日の夕方になっていた。周りを見回すと、長年住んでいる見慣れた僕のアパートの室内で、窓からは西陽が差し込んでいた。
僕はハッとして、左手の薬指を見た。もちろん、指輪などない。
「はっはっは、夢だもんね?」
僕はそう呟くと、洗面所で顔を洗い、ボサボサになった髪に櫛を通し、夕飯を買いにコンビニへ向かった。時刻は既に5時を回っていた。運が良ければ『さえ』に会えるかもしれない。
「いらっしゃいませ」
レジに立っているのは『さえ』だった。僕は嬉しくなったが、夕べ見た夢を思い出し、少し恥ずかしくもなった。
僕は一通り店内を回った後、唐揚げ弁当を持ってレジに並んだ。
「お弁当、温めますか?」
「あ!はい!お願いします!」
僕は照れ臭くて、すっとんきょうな声を上げてしまった。『さえ』は「クスクス」と笑いながら、お弁当を温め始めた。
その間、『さえ』は電子レンジに手を添え、僕には背中を向けていた。『さえ』は髪をアップにしているので、白いうなじが色っぽかった。僕は『さえ』と抱き合った夢を思い出してドキリとなり、少し力がみなぎった股間を何とかなだめながら、顔を赤くしてうつむいた。
チーン♪
『さえ』は熱々のお弁当を買い物袋に器用に入れると、その袋を僕に差し出した。
「お待たせしました。熱いので、お気をつけください」
『さえ』は首をかしげながら、ニコッと微笑んだ。買い物袋を持つ彼女の左手には、昨夜の夢の中で僕と交わした、青いリングが輝いていた。
(了)
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