3年ぶりに
太田信行と副島みなみは、3年前までよく会っていたセフレだった。身体の相性がよく、定期的に会っていたが、3年前に起きた新型感染症の流行によって会わなくなっていた。その間に連絡をとっていたわけでもなく、素性もよく知らない同士だったのでもう会うこともないとみなみは思っていたのだが、3年ぶりに信行から連絡がきて…
「最後に会ったのっていつだっけ?」
ラブホテルの小さなエレベーターの中で、無言の隙間を埋めるように太田信行は話し出した。
「いろいろ自粛とかなる直前だったから…え、3年前?」
副島みなみは、この3年をあれこれ思い返しながら答えた。
「3年か!」
「正直もう会わないと思ってた」
くすくす笑ってみなみは言った。
信行も少し気まずそうに笑う。
「あー、ね」
2人は、互いのフルネームや仕事も知らない間柄だ。
「でも、あれがなければ普通に続けてたでしょ」
信行が言う「あれ」とは、ここ数年世界を飲み込んでいた新型感染症によるパンデミックのことである。
「うん、そう…ね」
それまで互いに都合の良いセフレ関係だった2人は、感染症の流行によって会うことを何となく憚られたまま、それを放置し続けていた。
会えない中でも連絡を取ったりするほど、互いにとって重要な存在でもなかったからだ。
「ね」
信行は高い背丈を少しかがめ、みなみのマスクをぺろっとめくって顎に引っ掛けた。
そして、目を丸くしているみなみにそのまま口付けた。
信行自身はホテルに入る前からマスクを外していたが、こうしてマスクをめくってするキスはなかなかいやらしくて良いと思った。
「っ…ん」
みなみがほんの少しだけ顎を引いたのは、あまりに久しぶりのキスに躊躇いと驚きがあったのと、そういえば信行はこうしてホテルのエレベーターなどでキスをするのが好きだったと思い出したからだ。
3年前、月に1回のペースで会って濃厚なセックスをしていた頃の記憶がみなみの脳内に蘇り、ぞくぞくと背中に快感が走る。
ちゅっと音を立てて唇を離すと、信行はにやりと笑ってみなみの赤くなった顔を見た。
今日会うと約束した時から互いに昂っていたものを、いよいよこれからぶつけるのだと思うと、信行は早くも下半身に血が集まってゆくのを感じるのだった。
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