聖剣の剣士

・作

白いブラウスが、縦に大きく斬り裂かれる。Gカップの乳房を覆う、水色のブラジャーが露わとなった。斬り裂かれたのはブラウスだけではない。スカートも斬り裂かれていた。縦に大きく裂け、一枚の布となったスカートが足元に落ちる―――人間の負の想念が生み出す存在である魔剣。魔剣は人を襲う。人を殺す。そんな魔剣と対を成すものが存在する。それは聖剣。魔剣は聖剣でないと破壊できない。高村ユリは魔剣と戦い、破壊する聖剣の剣士であった。ユリは今夜も魔剣と戦う。人を守るための戦う。それが聖剣の剣士の使命であった。

 夜の街。
 街灯の数や民家が少ない区画。
 陽が沈むと、この区画は暗くなる。
 スーツ姿のその女性は、顔に必死の表情を浮かべて逃げていた。
 女性は追われている。
 追っているのは1人の男。白い服を着た男だ。
 肌の色は異様に白く、顔には表情というものが浮かんでいない。
 まるで人形のよう。不気味な男であった。
 そして男の右手には、長剣が握られている。
 夜空に浮かぶ月の光、そして数少ない街灯の光を浴び、男が持つ長剣の刀身はギラギラとした輝きを放つ。
 女性は走っている。男は歩いている。
 だから女性は男から逃げることができるはずだった。
 だというのに、男との距離が空かない。男から逃げられない。
 ずっと追われ続ける。

「きゃあっ!」

 女性はつまずき、転んでしまう。
 痛みでうめく女性に、白い服の男が近づく。
 女性は男の右手に握られている長剣を見て、顔をひきつらせた。
 ギラギラとした輝きを放つ長剣が振り上げられる。
 女性を斬り裂こうと、振り下ろされる長剣。
 だが、長剣の刃が女性を斬り裂くことはなかった。
 辺りに金属と金属がぶつかり合う、ガチーン! という音が大きく響く。
 女性を斬り裂こうとして男が振り下ろした長剣……それは、別の長剣の刀身によって妨(さまた)げられていた。
 男と女性の間に、1つの人影が割って入っていた。
 その人影も、長剣を持っている。
 月光と街灯の光を浴びて美しい輝きを放つ長剣……その刀身が、女性を男の長剣から守った。
 美しい輝きを放つ長剣を構えているのは、学生服姿の少女だ。
 ベージュのブラウスとスカートにニットベスト、そして白いブラウスに黒いソックス。
 癖のない黒髪をロングにしている学生服姿の少女。
 整った顔立ちをしており、美少女と呼んで過言ではない。
 美しい顔も印象的だが、それ以上に印象的なのはブラウスとベストを押し上げている胸であろう。
 胸のサイズは、軽く見積もってもGカップはある。
 豊満な乳房の美少女は、男の腹に蹴りを叩き込む。
 後ろによろめく男。
 長剣を持つ美少女……高村ユリは女性に向かって、

「逃げて!」

 と言う。
 ユリの声に押されるようにして、女性はその場から逃げだした。
 獲物としていた女性に逃げられ、まるで人形のような男はユリを睨んだ。
 刃のような視線だ。
 そのような視線を向けられたら、普通の人間だったら身がすくんで動けなくなってしまうことだろう。
 だがユリは、そのような視線を向けられても少しも怯(ひる)んだ様子を見せない。
 平然としている。

「覚悟することね、魔剣。あんたの命、今夜で終わるわ」

 ユリは男に切っ先を向け、そう告げた。

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