聖剣の剣士 (Page 2)
肌が異様に白い男は、長剣を振り上げてユリに襲いかかる。
振り下ろされる長剣。ユリは横にトンッと跳んで、男の一撃を軽々とかわす。
そして、お返しとばかりに長剣を素早く突き出した。
男は上半身をひねり、ユリの攻撃を避けようとする。
だが、完全には避けきれなかった。
ユリの長剣の刃が、男の左肩をかする。
血が、男の異様に白い肌を赤く染めた。
ユリは連続して突きを放つ。男の体が少しずつ傷ついていく。
対して男の攻撃はユリに当たらない。かする様子もない。
ユリの体には、小さな傷1つ付くことはなかった。
ユリは長剣を斜めに振る。男はその一撃を避けることも防ぐこともできなかった。
男の体に、斜めに傷が走る。その傷から血を噴き出し、後ろによろめく男。
ユリは一歩前に踏み出し、長剣を鋭く突き出した。
長剣の刀身が、男の胸を刺し貫く。
男の体がビクッと震える。
ユリが男の胸から長剣を引き抜くと、男は胸の傷から血をまき散らしながら路面に倒れた。
倒れ、動かなくなった男の肉体に変化が生じる。男の体が崩れていく。
崩れ、手にしていた長剣へと飲み込まれていった。
男の姿は、ユリの目の前から消えていく。
ユリの目の前にあるのは、刀身をギラつかせている長剣だけであった。
男の肉体を飲み込んだ長剣の前に立ったユリは、自身の長剣を振り上げる。
一気に振り下ろされたユリの長剣は、路面に落ちている長剣の刀身を半ばから折った。
「グオオオオオッ!」
刀身を折られた長剣から、まるで獣のような叫び声が響く。
刀身を二つに折られた長剣に無数のヒビが入ったかと思うと、一気に粉々に砕け散った。
長剣はもう存在しない……それを確認したユリは、右手を軽く振る。
すると、ユリの手から長剣が消えた。まるで、マジックのようだ。
ユリはその場から、静かに歩き去っていった。
魔剣と呼ばれるものが存在する。
人の負の想念が生み出すものだ。
魔剣は人に害を成す。
人を襲い、人を傷つける……それが魔剣だ。
魔剣を破壊できるのは、それと対になっている存在……聖剣だけだ。
ユリは聖剣を使い、魔剣から人を守る剣士であった。
闇の中、ソレは生まれた。
1本の剣……魔剣だ。
路面に突き刺さった魔剣の前に、1人の男が立つ。
黒い服を着た、背の高い男だ。
男は自分の本体である魔剣を掴み、路面から抜いた。
魔剣である男がすることは1つ……人に害を成すことであった。
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