トラックの行く先は (Page 6)

「あのぅ…恵美子さん」

恵美子が乗せていってくれると約束した目的地に着いた頃、空は白み始めていた。
おずおずと話し出した大輔が次に何を言うのか、恵美子にはもうわかっている。

「なに?」

「連絡先、とかって…あの、また…えっと」

拾ったヒッチハイカーとセックスすると、決まってまた会いたいと言われた。
しかし、恵美子の答えも毎回決まっている。

「ゆきずりだから、あんなに良かったんだよ」

一度きりだと思うから、思い切り乱れることができるのだ。
若い男とのセックスは恵美子にとって最高の娯楽だが、彼女には優先させるべき生活がある。

「…はい」

不服そうに、しかししつこく食い下がることもなく大輔も承諾した。

「じゃ、気をつけてね」

車を降りた大輔に手を振り、恵美子はゆっくりトラックを発進させる。
腑抜けた顔で大輔は、トラックが見えなくなるまで見送った。
そして、あれはもしかしたら夢だったのかもしれないと思いながら、この近くに銭湯やサウナ施設があるかどうかスマホで検索をし始めるのだった。

(了)

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