TSした生意気ちゃんが悪いおじさんに捕まって大敗北するお話 2 (Page 6)
(やっぱり変だったよな、ゆう子ちゃんの様子……。今からでも見に行ってやろうか)
――場面を変えて時は1時間後。山手線に乗ったマサは、優先席に座ってひたすら悩み続けていた。
(ああクソ、俺ってばどうしちゃったんだよ。彼女がいるのにあの子の事が気になるなんて……こんなのってないだろ!?)
などと必死に自分に言い聞かせても、脳裏に浮かぶのはゆう子の笑顔。彼女は不思議と自分と趣味が合う。友達のような気楽さもあり、それでいてオンナとしての彼女の顔も知っている――そして、ありのままの彼女はもの凄く魅力的だ。
(ぶっちゃけ、どストライクなんだよな~ゆう子ちゃん!きっかけがアレじゃなかったら絶対狙ってたのに……)
アナウンスと共に電車が止まり、電車の扉が開いた。乗車した酔っ払いが迷惑そうにマサを睨みつける。その時、スマホに通知が表示された。彼女からだった。
『マサ~電話しよ』
『それと、来週のデートなんだけどさ……』
「――フッ。俺は何を悩んでたんだよ」
マサはスマホの通知をスワイプして消し、一目散に駆けた。目的地はもちろん――ゆう子の元だ。家の場所なんて知らない、また会えるかなんて知らない。けれど、いてもたってもいられなかった。
――会いたい、今すぐ。彼女に会えば、何かが分かる気がする。
それで彼女との縁が切れても、家族友達の全てを失ってもかまわないと思えた。今のマサはまさに無敵の力に溢れていた。期待に胸を膨らませ無我夢中で駆け抜ける。――ゆう子と別れた住宅街に到着した時、彼は黒い車とすれ違った。運転席のおっさんと目が合い、汚いものを見たと舌打ちした。
「はぁ、はぁ、はっ……疲れた……水、自販機どこだ……」
全力疾走して息を切らした彼が自販機を求めて公園に行くのは歴然だった。そして、ニヤニヤしながら公衆便所を出るホームレスを見て、顔をしかめるのも当然だった。
――そして、公衆便所の中から聞こえる奇妙な雄たけびに関心が奪われるのは、必然だった。
(なんだ?この声……。猫や犬じゃねえよな)
「おぉぉ……んおぉぉぉ……」
(それにさっきのホームレスも気になる。なんで笑いながら出てきた?トイレ済ましてスッキリ快便ニコニコってか?まさかな……)
マサは水を買うことも忘れ、公衆便所の謎に夢中になっていた――あるいは、予感していたのかもしれない。とにかく、彼は単身で公衆便所の中に入っていった。
「ほぉぉおぉぉ……ほぉぉぉぉおぉぉ……」
薄汚れた便器が5つと、鍵のついた個室が3つ。謎の雄たけびは一番奥の個室から聞こえてきた。マサは万が一のために録画モードにしたスマホを構え、扉の陰から恐る恐る中を覗いた。
勢いがある
勢いがあってイイ!!
通行人 さん 2021年5月28日