次はあなたがシャッターを (Page 3)
夫に隠れて自慰をする。
しかも、それは過去の過ちとも言っても過言ではない写真を糧にして行われていた。
暁紀の呼吸がどんどん荒くなっていく。
背徳感が背筋を撫でまわし、乳首や陰核、そして膣内の敏感な部分を押し込む度に、それは電撃変換され脳髄へ駆け上った。燃え上がった獣欲はディスプレイの光を反射させ、彼女の瞳を炯々と輝かせる。
最早、夫の存在は彼女のスリルを伴った快感を高める装置になっていた。
ちらちらと寝室の様子を伺い、ノートパソコンのディスプレイに表示される過去の過ちと視線を行き交わせる。その忙しない自慰は、良くないことをしている、という得も言われぬ感情が湧きたたせた。
淫らに男と絡み合う自分で自慰をするなど、夫との性生活に満足していないと自白しているかのようだ。そんなことはない、と言い訳をするだけで熱く滾る媚肉で自らの指先を貪る快感が増す。
「おっ、おっ、おぉ、いぃっ、ひぃっ」
指先からの刺激が快感の喫水線を越える予感に四肢が突っ張る。暁紀の唇が唾液の糸を引きながら大きく開けられて、抑えきれなかった嬌声が天井に向かって飛び出していく。
「いっ、イっくぅぅ」
夫に聞かせるかのように暁紀は宣言し、喉を逸らして絶頂を迎えた。ぴくぴくと手足が意思を離れて小刻みに震え、内股が快感の余韻にぶるぶると幾度が大きく波打つ。
久方ぶりの自慰に暁紀は息を荒げ、気だるげに服の中から両手を引き抜いた。秘所を弄りまわしていた指先は愛液でふやけている。
汗と愛液で下着はびっしょり濡れており、失禁でもしたかのような有り様だ。
荒い息を吐きながら、暁紀はパソコンをシャットダウンする。そしてSDカードを引き抜き、掌に握り込む。
ふと、暁紀は暗くなったディスプレイに映る自分の顔に気付いた。
頬を紅潮させて汗をかき、未だ去らぬ絶頂の余韻に瞳を濁らせている。
欲情した女の顔だ、と暁紀は確信する。
ディスプレイを閉じ、自分の姿を隠して暁紀は溜息を吐く。
その溜息は、熱く愛欲に濡れていた。
*****
暁紀も健康というものを意識する年齢になった。
二十代までは美容にだけ気を付けていればよかったが、三十代も半ばとなった現在は、美容と健康はより密接なのだと実感している。とはいえ、食事や運動に関してガッチリと予定を組んでスポーツ選手のような管理をしているわけではない。
少々散歩して遠出するぐらいのものだ。
それでも八時間は外出して、たっぷりと歩くことになる。そのためか暁紀のボディラインは二十代の頃とさほど変わっていない。むしろ、三十を過ぎてからは体の線はそのままに、控えめな色香をも纏うようになった。
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