ウィザードレディー (Page 3)

 翌日、カルト教団の人間が逮捕されたというニュースが新聞に載り、テレビで報道された。
 当然というべきか、魔術のまの字も出ることはなかった。

◇◇◇

 とある大学。神楽はそこで講義を受けていた。
 魔術師の神楽、普段の顔は大学生であった。
 講義が終わると、スマートフォンが着信音を鳴らす。
 液晶画面を見ると、表示されているのは知人の名前。
 神楽は通話のアイコンを押す。

「木原さん、どうかしましたか?」

『俺がキミに電話するときは、困ったことがあるときだけだ』
 聞こえてくるのは壮年男性のものと思われる声。

「まあ、それもそうですね」

 木原なる人物が神楽に電話をするときは、彼が言ったとおり困ったときだけである。
『今から会えるか?』

「ええ、講義は終わりましたから、平気ですよ」

『なら30分後、いつもの店で』

「分かりました」

 告げることを告げると、木原は通話を切った。
 スマートフォンをジャケットの内ポケットにしまうと、神楽は大学の駐車場に向かい、スクーターに乗った。

 神楽はある喫茶店の駐車スペースにスクーターを停めた。
 古めかしい雰囲気の喫茶店。店内は薄暗く、静かな音楽が流れている。
 神楽はカウンターにいる初老のマスターにコーヒーを注文し、奥の目立たない席に足を運ぶ。
 その席には、1人の男がいた。
 スーツを着た、40代くらいの男。

「お待たせ、木原さん」

 言いながら神楽は木原という男の向かいに座った。
 木原……この街の警察署の刑事課課長である男。

「昨日は大活躍をしたようだな」

 木原はコーヒーを飲みながら言う。
 昨日の大活躍……悪魔崇拝者を倒し、女性を救ったこと。
 神楽が
「大したことじゃないですよ」
と答えると、注文したコーヒーが運ばれてきた。
 それを一口飲む。
 ほのかな酸味があるコーヒーは、神楽の好みである。

「で、私になにを頼みたいんです?」

 酸味のあるコーヒーを味わった神楽は木原に問う。
 木原は大判の封筒を彼女に差し出した。
 神楽はそれを受け取り、中身を確認する。
 中身は数枚の写真と書類だ。
 写真を見た神楽は、

「うわ、エグっ」

 わずかに顔をしかめた。
 写真に写っているのは、死体である。
 胸をズタズタに引き裂かれた、女性の死体。写真はすべてそれだ。
 書類は被害者の名前、死体が見つかった状況などが書かれたもの。
 どういうふうに殺されたのか、死体はどんな状態だったのかも書かれている。

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